アリババ・アントへの圧力 中国当局の本当の狙いとは

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銀行のような規制や監督を受けずに営む金融事業が巨大化

   実際には、何が問題なのか。アリババ成長の過程で、多くの小売店がつぶれたとの批判は従来からあったが、それ以上に、アントが銀行のような規制や監督を受けずに営む金融事業が巨大化し、実体経済にリスクを与えることへの懸念が指摘されていた。アリペイの支払いは通常、銀行口座にある現金の範囲内で行われるが、アントはこのほか、クレジットカード同様の後払い方式や個人向けキャッシングサービスも展開していて、そうした融資の総額は20年6月末時点で1.7兆元(約27兆円)にも達するという。

   アントは人工知能(AI)を駆使して融資条件を決めているが、実際の融資の大部分はアントから融資情報を受けた他の金融機関が行っており、アントは紹介手数料を受け取って稼ぎつつ、融資焦げ付きのリスクを金融機関に転嫁しているわけで、「こうした構造が問題視されているようだ」(大手紙経済部デスク)。

   もう一つ問題視されてきたのが「余額宝(ユエバオ)」という投資信託。公社債や短期の金融商品を中心に運用するMMF(マネー・マーケット・ファンド)の一種で、銀行より金利が高い。アリペイの電子決済では銀行口座のお金をアリペイに移して使うが、使いきれずに余った資金の受け皿になったのが余額宝で、2017年には2600億ドルと、世界最大規模の投信に成長。銀行からの資金シフトが起きたもので、さすがに危機感を深めた当局の意向を受け、翌年には1000億ドル減らしたが、当局とアリババの対立点として残り、その後の流れの遠因ともいわれる。

   GAFAに引けを取らないまでに成長したアリババは中国経済の成功を体現するが、当局にとっては、自分たちの影響が及ばないところで肥大化するのは好ましくない。特に、銀行以外の金融事業が拡大すれば、金融政策の効果が薄れ、金融システムが揺らぐ懸念も出てくるし、中国が進める「デジタル人民元」普及を阻害する可能性も指摘される。だから、規制の下での秩序ある成長を当局は求めるが、アリババにすれば、規制が成長を阻害すると考えるのかもしれない。当局にも、そこはジレンマだ。

   ジャック・マー氏は問題の講演後、表舞台から姿を消していたが、年が明けて2021年1月20日、慈善事業支援のイベントにオンラインで参加し、3カ月ぶりに建材をアピールした。ただし、50秒の短いメッセージを寄せただけで、本業については語らず、水面下で当局との綱引きが続いていることをうかがわせた。

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