効率追い求めた生産スタイルが仇に 半導体不足で自動車メーカーが打撃を受ける理由

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   半導体の不足が世界的に深刻になっている。新型コロナウイルスの感染拡大のよる製品の需給の変動と、米国の対中国制裁が絡み合って起きているのだ。

   様々な製品の部品として不可欠な半導体だが、とくに深刻な影響を受けているのが自動車産業だ。

  • 自動車メーカーが半導体の奪い合い(画像はイメージ)
    自動車メーカーが半導体の奪い合い(画像はイメージ)
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「世界で150万台減産」の見通しも

   トヨタ自動車は中国・広東省の工場で生産ラインを一時止め、米国テキサス工場でもピックアップトラック「タンドラ」の生産を減らす。

   ホンダは2021年1月に小型車「フィット」などを国内で約4000台減、米国とカナダの工場でもセダン「アコード」など5車種を減産する方針。日産自動車も小型車「ノート」の生産を1月に数千台減らし、1~3月の減産規模は1万台を超えるかもしれないという。

   スバル(SUBARU)は群馬製作所(群馬県太田市)、米インディアナ州の工場で「インプレッサ」などの減産に入り、3月までに計5万台減の減産規模になる可能性があるという。

   海外では独フォルクスワーゲン(VW)が20年12月、欧州や中国などで減産すると発表しているほか、米フォードもケンタッキー州の工場でSUV「エスケープ」と「リンカーン・コルセア」の生産を停止した。

   21年1月16日にフランス大手グループPSAと合併手続きを完了したフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)もカナダとメキシコでのSUV生産を一時停止するなど、軒並み生産調整に取り組んでいる。

   三菱UFJモルガン・スタンレー証券によると、1~6月の減産規模は世界で150万台前後、そのうち日系メーカーは50万台前後にのぼる見通しだという。

なぜ半導体が足りなくなったのか

   半導体は電子部品の制御などに幅広く使われているが、現代の自動車は工業技術の集大成といえる商品で、最新の電子制御やIoT技術が盛り込まれており、カウントの仕方にもよるが、1台で50~80個、高級車では100個以上の半導体が組み込まれているといわれる。その半導体が不足すれば、たちまち生産が滞る。それが今起きていることだ。

   こうした事態は、コロナと米中対立が複合して起きているという。

   まずコロナ。感染拡大で20年春から自動車生産が大幅減産に追い込まれたが、秋以降は世界的に生産が急回復しており、トヨタ自動車は9月以降の世界生産台数が過去最高を更新するほどだ。

   他方、コロナ禍でもテレワーク(在宅勤務)や「巣ごもり消費」でパソコン、ゲーム機の売り上げが好調で、第5世代通信(5G)関連やデータセンターなどの投資増もあって半導体の需要が伸びている。

   業界団体によると、半導体市場は21年には前年比8.4%増の4694億ドル(約50兆円)と、過去最高を更新する見込みという。

   「半導体の奪い合い状態」(自動車メーカー)になるなか、自動車メーカーが一度生産を落とし、半導体の発注を絞ったのを受け、半導体メーカーが他への供給に切り替えたため、特に自動車の半導体不足が顕著になっているというのだ。

半導体不足は「半年~1年くらい続くのではないか」

   米中対立の影響も無視できない。米トランプ前政権時代の20年9月に中国スマホ最大手の華為技術(ファーウェイ)への制裁が強化されたが、その前にファーウェイが半導体の大量に調達に走って品不足が始まった。

   さらにトランプ政権の制裁の手が中国の半導体受託生産大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)にも向かう見通しになったことから、半導体の需給への懸念が一気に高まり、調達先として台湾の受託生産世界最大手の積体電路製造(TSMC)などに注文が殺到し、生産が追い付かなくなった。

   TSMC などは新型コロナ禍で需要が伸び、先に受注していた家電や通信関連向け半導体を増産していたため、自動車向けの需要に十分に対応しきれていない――という状況だ。

   さらに、自動車産業特有の生産体制が影響しているとも指摘される。家電、ゲーム、通信などのメーカーは半導体メーカーから直接調達するのに対し、自動車は1次下請け、2次下請けが調達した半導体を組み込んでメーカーに納入するので、完成車メーカーのグリップが効きにくい。

   トヨタの看板方式に代表されるジャスト・イン・タイム方式で在庫負担を極限まで減らして生産効率を高めてきたことも、部品不足になると弱点に転じる。

   「半導体は製造工程が多く、新たなラインを組むには数か月かかる」(業界関係者)ともいわれ、現在の需給が逼迫した状況は「半年~1年くらい続くのではないか」(同)との見方が強まっている。

   「産業のコメ」ともいわれる半導体の調達を海外メーカーに頼る日本は、安定供給という重い課題が改めて突き付けられている。

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