2021年1月25日発売の「週刊少年ジャンプ」2月8日号から連載が始まった松井優征さんのマンガ「逃げ上手の若君」が早くも好評だ。主人公は鎌倉幕府末期から南北朝時代の動乱期に生きた北条時行で、史実をもとに彼を「逃げる英雄」として描く。
武士を主人公にしたマンガでは異色の「逃げるヒーロー」という設定、南北朝時代を舞台に選んだセンスがマンガファンと歴史ファンの双方から注目されている。この時代の面白さはどんなところにあるだろうか。
生年も不明な北条時行
「逃げ上手の若君」は「暗殺教室」「魔人探偵脳噛ネウロ」などを描いた松井優征さんの約5年ぶりの新連載だ。
北条時行は鎌倉幕府の実権を握った北条氏の最後の当主・北条高時の遺児であるが、生涯には不明な点が多い。鎌倉幕府滅亡後の1335年に、潜伏していた信濃を拠点に時行をリーダーとして幕府再興を目論む中先代の乱が起きて鎌倉を占拠し、これがきっかけで足利尊氏と後醍醐天皇は対立、その後も南北朝の動乱に陰から関わっていたようだ。それでも同時代の足利尊氏・後醍醐天皇・楠木正成らに比べても謎が多く知名度も低い。
日本史関係の歴史書を多く出版している戎光祥(えびすこうしょう)出版の編集長の丸山裕之さんは1月28日、J-CASTニュースの取材に、
「北条時行の正確な生年は分かっておらず、生母も不明です。中先代の乱の2年後には今度は南朝方につき、関東を転戦して足利方と戦い何度か鎌倉を陥落させています。1352年頃に鎌倉で処刑された記録が残っていますが、落ちのびた伝説もあります」
と史実の時行の生涯について話す。
「逃げ上手の若君」は第1話でいきなり鎌倉幕府の滅亡を描いていて、南北朝の動乱が主な舞台になると思われる。「時行が鎌倉からどうやって信濃に落ちのびたのか、中先代の乱が鎮圧されてから何をしていたのか、なぜ南朝に服属したのかも謎が多いです」(丸山さん)とのことで、マンガの描写に注目したい。