プロデューサーから「お前切るぞ」
久高さんによれば、シグナル・エムディから打診され、19年11月から30分のアニメ番組の制作に作画監督として携わった。
36万円の契約を口約束で結び、前金として18万円を受け取ったものの、残りの額はいまだに支払われていないという。12月末に担当のプロデューサーに請求書を送るも、受け取りを拒否された。
「私もうっかりしていた面はありますが、アニメーション業界では口約束が多いこともあって書面で契約を結んでいませんでした。あまりにもひどい状況になっているので最近では書面で見積もりを出してもらうようにしていたのですが、立場的には圧倒的に向こうが上で、当時はお金に窮していたこともあり口約束で二回払いで呑みました」
アニメ関係者からなる日本アニメーター・演出協会の「アニメーション制作者実態調査2019」によれば、「必ず契約書を取り交わしている」と答えたのはわずか13.9%で、「時々取り交わしている」が31.4%、「まったく取り交わしていない」が36.4%だった(382人回答)。受注側としては「基本的には取り交わしたいと思う」「取り交わしたい仕事もある」が合計85.6%に上る(312人回答)。
久高さんは、プロデューサーから支払いを拒んだ理由を「あまり仕事をしていないから」「成果を見せてからにしろ」と説明されたという。
久高さんの仕事は、多くのアニメーターが書いた数千枚の原画をチェックし、修正を加えるというもの。12月までは上がってくる成果物が少なく、「シグナルさんの方でもマネージして、私のところに持ってきてもらわないと仕事にならないので、『お互い様じゃないですか』と交渉しましたが、怒気をはらんだ口調で拒まれました」
放送は21年春の予定でスケジュールにも余裕があるため、1月末には法事で帰省すると、プロデューサーから電話で「こっちが期待している進行状況になっていない」「お前切るぞ」と凄まれた。
その後も、制作担当を通じてプロデューサーから「2月いっぱいに仕事が終わらなければ、全部取り上げて一銭も払わん」と言われるなど、久高さんは我慢の限界に達した。