メディアの話題を目下独占しているのが、ヤンキースをFAになった田中将大の楽天復帰だ。メジャーの先発でバリバリ投げていた右腕は32歳と脂が乗り切っている。その実績は過去にメジャーから復帰した日本人選手と次元が違う領域だ。
田中の日本球界復帰を、「高校時代のライバル」はどう感じるだろうか。日本ハム・斎藤佑樹だ。
輝かしい実績を残す田中将大
楽天在籍時は2013年に24勝0敗、防御率1.27で球団創設以来初の日本一に導くなど、在籍7年間で最多勝、最優秀防御率、最高勝率、沢村賞をいずれも2度受賞。NPB通算99勝35敗3セーブ、防御率2.30と圧巻の数字を残している。
13年オフにポスティングシステムを利用して名門・ヤンキースに移籍以降も、初年度から6年連続2ケタ勝利をマークした。
昨季は3勝に終わったが、新型コロナウイルスの影響に加えて開幕前の練習中に打球が頭部を直撃して病院に搬送されるなどアクシデントが続いたことも配慮しなければいけない。
メジャー通算78勝46敗、防御率3.74。日米通算200勝に残り23勝に迫っている。スポーツ紙の楽天担当記者は
「日本の球場で投げるのは8年ぶりです。米国とは土の固さが違うマウンド、縫い目の高さや大きさが違うボールに対応しなければいけないので最初は試行錯誤する部分があると思いますが、2年契約を結んだ楽天で200勝達成は十分可能でしょう」
と期待を込める。
一方の斎藤佑樹は...
今から15年前の2006年、斎藤は早稲田実業で全国制覇を達成した。駒大苫小牧のエース・田中と延長引き分け再試合で投げ合った決勝戦は、現在も高校野球の名勝負として取り上げられている。
端正な顔立ちでマスクを取り出し、汗をぬぐう姿が話題になった斎藤は「ハンカチ王子」の異名で社会現象になるフィーバーを起こす。早大に進学すると六大学史上6人目の通算30勝、300奪三振を達成。4球団競合のドラフト1位で日本ハムに入団した際は田中に負けない注目度だったが、10年の月日が経った今はその輝きが完全に消えてしまった。
新人の11年に6勝を挙げたのが自己最多。18年から3年連続未勝利とファーム暮らしが長く続き、シーズン終盤に「戦力外になるか」が注目される寂しい状況になっている。
昨年に10月に右肘の内側側副じん帯断裂と診断され、自身の血液から血小板を取り出し、患部に注射する再生療法「PRP療法」を選択。現在はリハビリに励んでいる。1軍のマウンドに立つことを目指すが、その道のりは険しい。
田中は斎藤の手の届かない位置に上り詰めている。
明暗がくっきり分かれた両投手はもはやライバルと言える関係性ではない。だが、06年の甲子園のあの投げ合いをもう一度見たいというファンもいるだろう。マスコミも注目する投げ合いが実現するかは斎藤次第だ。意地を見せられるか。