市場はTOBに懐疑的?
日本製鉄は2017年5月中旬以降、東京製綱の経営陣に経営改善を促してきたものの危機意識は芽生えず、経営上の問題点に対応策を講じる姿勢を示さなかったとしている。行間ににじむのは、扱いにくいOBに業を煮やして、実力で持ち株比率を高めてプレッシャーをかける、という構図だ。実際、株式保有比率を20%未満にとどめ、持ち分法適用会社とせず、「経営の独立性を維持」と明言していることにも、経営体制刷新を目的としたTOBであることがうかがえる。
こうした思惑が見透かされたのかTOB発表翌22日の日本製鉄の株価は売りが先行して下落。逆に東京製綱の株価は一時、1470円まで上昇したが、その後は1200~1300円台で推移し、TOB価格の1500円に届かない状況が続いており、市場はTOBに懐疑的とも読める。
6兆円近い連結売上高の日本製鉄にとって約24億円のTOB費用は微々たるものかもしれないが、売上高600億円と100分の1の規模の東京製綱に対し、なぜそこまで躍起になるのか、不可解さも残る。異例のTOBの結末は果たしてどうなるか。