コンビニ大手3社の一角を占めるファミリーマートが転機を迎えている。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、2020年3~8月期の上半期連結最終損益は107億円の赤字(前年同期は381億円の黒字)に転落。親会社の伊藤忠商事はテコ入れのため約5800億円を投じて完全子会社化に踏み切り、新社長を2021年3月1日付で送り込む。果たして「ファミマ」はどのように生まれ変わるのか。
コロナ流行でオフィス街の売り上げ減少
再編が繰り広げられてきたコンビニ業界の中でも、ファミリーマートはその主役を演じてきた。2009年には、「am/pm」を展開していたエーエム・ピーエム・ジャパンを完全子会社化。2016年には「サークルK」「サンクス」を展開していたユニーグループ・ホールディングスと経営統合して、ユニー・ファミリーマートホールディングス(現・ファミリーマート)に。これらコンビニチェーンの店舗がいずれもファミリーマートに転換された結果、2020年2月末の国内店舗数は1万6611店となり、首位のセブン-イレブン(2万916店)に次ぐ国内第2のコンビニチェーンとなった。
だが、ここ数年のコンビニ業界は取り巻く環境が激変した。国内店舗数が飽和状態に近づくのとタイミングを合わせるように、フランチャイズ加盟店からコンビニ本部に対する不満が噴出し、国が是正に乗り出す異例の事態に発展。加盟店との契約見直しでコンビニ本部側の収益力が低下した。そのため、買収を繰り返して本部の社員数が膨らんでいたファミリーマートは2019年に40歳以上の社員を対象に希望退職を募ると発表し、1000人超が応じた。2020年には新型コロナウイルスの流行が始まり、テレワークの急速な普及によってオフィス街にある店舗の売り上げ減少に歯止めがかからない。
伊藤忠商事が、直接ファミリーマートの改革へ
こうした難局で経営を担ってきた澤田貴司氏が社長を退き、代表権のある副会長に就くことになった。後任には伊藤忠商事で小売りなど生活消費分野を担う「第8カンパニー」のトップを務めている細見研介執行役員が就く。澤田氏も伊藤忠商事出身だが、30代の頃には当時の社長に手紙を書いて「商社は流通業に本格的に参画すべき」と訴えるような型破りの人物。40歳で「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングに転職して、柳井正社長に認められ副社長を務めた異色の経歴の持ち主だ。
伊藤忠商事から呼び戻されて、2016年からファミリーマート(当時はユニー・ファミリーマートホールディングス傘下の事業会社)の社長に就いていた。だが、ファミリーマート株式の50.1%を保有していた伊藤忠商事が2020年7月に完全子会社化を決断したのは、澤田氏の手腕に不満があったからこそ。今後は、岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)率いる伊藤忠商事が、直接ファミリーマートの改革を進めていくことになる。
新社長の細見氏は、コンビニを巡る経営環境の変化を「サッカーをやっていたらいつの間にかラグビーに変わっていたようなものだ」と例え、ファミリーマートの「再構築」に意欲を示した。今後はデジタル技術を駆使して、コスト削減に手を付けていく意向だ。コロナ下で移ろう消費マインドをつかみ、新たなコンビニの姿を築き上げることができるか。伊藤忠商事の真価が問われる。