2021年1月になり、にわかに活気立ってきた構想が「第2青函トンネル」プロジェクトだ。文字通り津軽海峡にもう1本トンネルを通す構想だが、そのメリットとデメリットはどんなところにあるのだろうか。
鉄道は客貨分離、道路は自動運転車専用
第2青函トンネルについては20年11月にJAPIC(日本プロジェクト産業協議会)が札幌で行われたシンポジウムで概要を発表、これを北海道新聞が11月22日に報じ、日本経済新聞も21年1月2日の紙面でその可能性を検討している。
これまでも鉄道専用・道路専用などいくつかのプランが構想されていた第2青函トンネルだが、JAPICの構想は道路と鉄道の併用であることが特徴だ。トンネル上部に複線の道路、下部に単線の線路を敷設し、道路は自動運転車専用、線路は貨物列車専用とする。またトンネルへのアプローチとして青森側は津軽線の終点三厩駅付近(青森県外ヶ浜町)、北海道側は道南いさりび鉄道木古内駅(北海道木古内町)付近から新線となり、全長は現行青函トンネル(53㎞)より短い31㎞を想定、総工費は約7200億円を見込んでいる(青函トンネルは約6900億円)。
JAPICが主張するメリットは、北海道と本州を結ぶ物流ルートの強靭化である。津軽海峡をフェリーで渡るよりもコストを削減して道内の農水産業の活性化が可能であると主張する。もう1点は鉄道の貨客分離による北海道新幹線の輸送改善である。青函トンネルで北海道新幹線と貨物列車は線路を共有しており、新幹線は貨物列車に配慮して最高速度を時速160㎞に抑えている。貨物列車を分離すれば新幹線の高速化も可能であるとしている。確かに新幹線の高速化も可能になるし、津軽海峡を道路で移動できるようになればトラック輸送の方も天候に影響されにくくなり、安定した物流ルートの構築に寄与するだろう。
逆に「ボトルネック」にならないか
ところが、本構想による貨物列車の分離には未知数のデメリットがある。トンネル内の線路が単線のため、複線に比べて効率が大幅に下がるのが懸念されることだ。トンネル内の約31㎞で行き違いができず一方通行となれば、現状の複線運転よりも冗長性は下がる。
津軽海峡は本州日本海側と太平洋側の双方から北海道へ向かう列車が通るゆえ、ここがボトルネックとなってしまっては本末転倒だ。折しも21年1月は東北・北陸の豪雪により貨物列車のダイヤが大幅に乱れる事態が起きたばかりだが、単線ではダイヤの回復も容易ではなくなるかもしれない。
道路側も制約が多い。自動運転車対応の片側1車線のみという構想で、許容できる交通量は多くはなく、本州と北海道を結ぶ道路としては頼りないのではないだろうか。道路・鉄道併用でかつ1本のトンネルとするためにこのような構想にまとまり、想定工費は約7200億円となったが、速度の制約があるとはいえ鉄道では既に本州―北海道がレールで結ばれている以上、青函トンネルをもう1本つくるほどのメリットが得られるか冷静なコスト評価が必要だろう。
道路の方は津軽海峡を結ぶフェリーと競合するゆえ、現在青森―函館・大間―函館を航行するフェリーを苦境に陥れる可能もある。
もう1本の青函トンネルとなると夢は壮大ではあるが、鉄道は単線、道路は2車線というコスト優先ともとれる構想が本州と北海道を結ぶ大動脈にふさわしいか、様々なセクターで冷静な検証を望みたい。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)