逆に「ボトルネック」にならないか
ところが、本構想による貨物列車の分離には未知数のデメリットがある。トンネル内の線路が単線のため、複線に比べて効率が大幅に下がるのが懸念されることだ。トンネル内の約31㎞で行き違いができず一方通行となれば、現状の複線運転よりも冗長性は下がる。
津軽海峡は本州日本海側と太平洋側の双方から北海道へ向かう列車が通るゆえ、ここがボトルネックとなってしまっては本末転倒だ。折しも21年1月は東北・北陸の豪雪により貨物列車のダイヤが大幅に乱れる事態が起きたばかりだが、単線ではダイヤの回復も容易ではなくなるかもしれない。
道路側も制約が多い。自動運転車対応の片側1車線のみという構想で、許容できる交通量は多くはなく、本州と北海道を結ぶ道路としては頼りないのではないだろうか。道路・鉄道併用でかつ1本のトンネルとするためにこのような構想にまとまり、想定工費は約7200億円となったが、速度の制約があるとはいえ鉄道では既に本州―北海道がレールで結ばれている以上、青函トンネルをもう1本つくるほどのメリットが得られるか冷静なコスト評価が必要だろう。
道路の方は津軽海峡を結ぶフェリーと競合するゆえ、現在青森―函館・大間―函館を航行するフェリーを苦境に陥れる可能もある。
もう1本の青函トンネルとなると夢は壮大ではあるが、鉄道は単線、道路は2車線というコスト優先ともとれる構想が本州と北海道を結ぶ大動脈にふさわしいか、様々なセクターで冷静な検証を望みたい。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)