2020年6月に配布が始まった新型コロナウイルス対策のための接触確認アプリ「COCOA(ココア)」で陽性が確認された件数が「現時点で把握できていない」ことが、21年1月21日の菅義偉首相の衆院本会議での答弁で明らかになった。
感染拡大を反映する形で、COCOAに登録されている新型コロナ陽性者の数は、1か月ほどで急増。ただ、登録している陽性者の割合は、陽性者全体の2.6%に過ぎない。菅氏は「感染拡大防止という、アプリの効果を高めていく」としているが、その「アプリの効果」を政府として具体的な数字で説明できない状態に陥っている。
「利用者が増えることで、感染拡大の防止につながることが期待されます」
COCOAは、「ブルートゥース」を利用して、他のスマホと半径1メートル以内に15分以上いる状態を「接触」と位置づけて記録。利用者が検査で陽性が判明した場合、陽性になったことをアプリに登録すると、接触の記録があるスマホに「COVID-19にさらされた可能性があります」といった通知がいく仕組みだ。
厚労省のウェブサイトでは、COCOAを利用する意義を
「利用者は、新型コロナウイルス感染症の陽性者と接触した可能性が分かることで、検査の受診など保健所のサポートを早く受けることができます。利用者が増えることで、感染拡大の防止につながることが期待されます」
と説明しているが、不具合が相次いだこともあり、利用者数の増加ペースは鈍っている。厚労省は定期的にCOCOAの累計ダウンロード数と陽性登録件数を公表している。ダウンロード数の推移は「12月25日2228万件→1月8日2310万件→1月15日2365万件→1月21日2397万件」といった具合で、ここ4週間で増えたのは7.6%だ。一方の陽性登録件数は、「12月25日5297件→1月8日6929件→1月15日8040件→1月21日8874件」と推移し、約4週間で67.5%増えている。ただ、この登録件数は陽性者全体の2.6%に過ぎない。
ファーウェイ社スマホには未対応、菅氏「技術面を継続して情報収集しつつ、精査」
菅氏は国民民主党の玉木雄一郎代表の質問に対する答弁で、ダウンロード数、陽性登録件数、陽性者全体に対する割合を説明した上で
「なお、アプリにより陽性が判明した件数の把握には保健所との協力が必要であり、現時点で把握できていない」
と発言。その上で、
「政府はさらなる広報に務め、より多くの方に活用していただき、感染拡大防止という、アプリの効果を高めていく」
と述べた。
さらに、玉木氏はCOCOAが華為技術(ファーウェイ)製品にはインストールできないと指摘しており、「ファーウェイ社に確認したところ、昨年10月末から厚労省に対応を依頼しているのに3か月近く経った今もなしのつぶて」。なおツイッターで21日、古いファーウェイ製品にインストールできたという指摘に対して、玉木氏は「はい。新しい機種にインストールできないのです」としている。
ファーウェイの日本でのシェアはきわめて小さいが、世界的にはサムスン電子(韓国)に次ぐ2番目に大きいシェアを誇る。日本政府は日本入国の際にはCOCOAインストールの誓約を求めており、今後、東京五輪開催に向けて水際対策が緩和された際には、この問題の影響が大きくなる可能性がある。この点について菅氏は「技術面を継続して情報収集しつつ、精査していく」と述べるにとどめた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)