匿名SNSで自社商品の「絶賛口コミ」オルビスが謝罪 会社は「ステマ」関与?質問には答えず

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   化粧品メーカー「オルビス」は2021年1月21日、SNS上で社員が身分を隠して自社およびグループ会社「ポーラ」の商品の宣伝をしていたとして、「深く反省すると共に、心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。

   一般人を装ってPR活動を行う、いわゆる「ステルスマーケティング」(ステマ)に該当するとして、消費者からは企業倫理を問う声が相次いでいる。

  • オルビス公式サイトより
    オルビス公式サイトより
  • 実際の投稿
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  • オルビス公式サイトより
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「2020 MY BEST COSME」大半は自社商品

問題の人物は、オルビスで広報業務に携わっているとみられる従業員だった。

   ツイッター、インスタグラムで「都内OL」を名乗る匿名アカウントを運用し、美容関連の話題を発信していた。15年1月開設のツイッターのフォロワー数は3万8000と、SNS上で影響力を持つ「インフルエンサー」といえる。

   J-CASTニュースが確認したところ、ツイッターでは「オルビス」または「ORBIS」を含む投稿を計24回、「ポーラ」または「POLA」を含む投稿は計7回している。商品名に言及せずに紹介したり、フォロワーの好意的な反応をリツイート(拡散)したりもしている。

   多くは「優秀すぎ」「絶大な信頼がある」「他にはない質感で瞼そのものを美しく見せてくれる」などと絶賛する意見とともに商品を紹介している。「2020 MY BEST COSME」と題した企画では、18商品中半分がオルビス、ポーラの商品だった。

   注目を浴びる投稿も珍しくない。「ナイトパックは年に2回、夏と冬にでるオルビスのを愛用してるんだけど、先日友人にプレゼントしたところ"肌がもちもちすぎる..."ってうれしすぎる報告をもらった 冬は酵美人。これめっちゃおすすめ〜」(21年1月投稿)は800リツイート、1万いいねを集めた。

   宣伝目的とみられるツイートには、ハッシュタグ「#pr」を添えているが、オルビス、ポーラ関連の投稿では20年2月の「先日オルビスの新作発表会へ(中略)2530円でこれが手に入るの凄いと思う...」のツイートのみだった。翌3月には、オルビスの広報社員2人と「オルビスミスター彼氏に勧めたい」「わ〜、ありがとうございます 嬉しいです」などとツイッターでやり取りしている。

オルビス、ポーラ両社が声明

   「ステマ」疑惑が浮上したのは、21年1月上旬だ。前述のアカウントが19年下旬ごろから、頻繁にオルビス・ポーラの商品を取り上げていると、インターネット上で複数指摘された。

   オルビスは1月21日、声明を発表し、「弊社従業員がSNSの個人アカウントでのプライベートな投稿において、従業員であることをプロフィールや投稿文へ明記せずに、弊社ならびにグループ会社の商品紹介を行っているという事実を確認いたしました」と疑惑を認めた。

   声明によれば、この従業員は入社前から同社の商品をSNSで紹介し、入社後も継続していた。今回の不祥事の原因を「入社時の教育が不十分であり、弊社従業員であることを明かさずに弊社商品(グループ会社の商品含む)に関する投稿を行ってはならないというSNS投稿における社内ルールを徹底させることができていなかったこと」と分析し、「このような事態を招いてしまったことを深く反省すると共に、心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。

   再発防止策としては「SNS投稿における社内ルールの徹底・全従業員に対する研修実施」などを予定しているという。

   ポーラも同日、「弊社とグループ各社においては、従業員の個人情報を共有しておらず、グループ会社社員であることを認識しておりませんでした。グループ間の情報共有不足により、ご不審の念をおかけいたしましたこと、お詫び申し上げます」などとコメントを出した。

オルビスの声明全文
オルビスの声明全文
ポーラの声明全文
ポーラの声明全文

オルビスに取材も...

   J-CASTニュースは21日、オルビスに(1)当該従業員の入社日(2)ステマの動機(3)アカウントを把握していたか(3)会社の関与の有無(4)ステマは社内ルールで禁止していたか――などを尋ねたが、「いただいたご質問につきまして、改めて社内で確認を行いましたが、個人情報の観点でお答えできないというのが弊社の見解でございます」「開示できる情報といたしましては、現状公式HPにて公表している情報が全てでございます」などと答えるにとどめた。

   広告代理店などで構成する業界団体「WOMマーケティング協議会」の広告ガイドラインでは、商品・サービスを宣伝するSNSの投稿には「PR」「タイアップ」「提供」といった「便益タグ」を明記すべきなどと自主規制を定めている。

   しかし、同協議会が19年7月26日~8月14日の期間、インフルエンサー233人を対象にした調査では、便益を明示しないケースがある(「だいたい行っている」「あまり行っていない」「まったく行っていない」の合計)と答えた割合は37.8%に上った。

   自身のファンを騙(だま)しているともいえ、今回のように炎上リスクもはらむが、「閲覧者が不快に思うとイヤ」「広告や宣伝ぽくしたくない」などを理由にためらってしまうという。

(J-CASTニュース編集部 谷本陵)

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