岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち<最終回>
米国はこれからどこに向かうのか

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「僕らは、同意しないことに、同意しなければ」

   ひとり少し離れた場所で黒づくめの服の男性ドンが、折り畳みチェアに座っていた。

   彼の傍に、こう書かれたサインが立っている。

「Stop Hating Each Other Because You Disagree(意見が違うからと憎しみ合うのはやめよう)」

   私は前に何度も、このドンをホワイトハウス前の広場「ブラック・ライブズ・マター・プラザ」で見かけたことがある。

   黒人差別運動の「聖地」とも言えるこの広場で、運動を支持する人たちと、キリスト教徒やトランプ支持者らとの激しい言い合いが始まると、ドンはサインとともにどこからともなく現れ、衝突する人たちの間に割って入り、そこに座り込んでいた。

   ドンがいつも決まって大音響で流している曲が、「God Bless the U.S.A.(ゴッド・ブレス・アメリカ)」だ。

And I'm proud to be an American
where at least I know I'm free
And I won't forget the men who died,
who gave that right to me
And I'd gladly stand up next to you
and defend her still today
'Cause there ain't no doubt I love this land
God bless the U.S.A
私はアメリカ人であることを誇りに思う
自分が自由でいられる国
私にその権利を与えてくれ
戦争で死んでいった人たちを
私は忘れない
そして私はあなたたちに続いて喜んで立ち上がり
今も彼女(米合衆国)を守る
なぜなら私は疑うことなく、この国を愛しているから
神が合衆国を祝福してくれた
(和訳は著者)

   大統領就任式の後、ドンが私に「これから、アメリカのイメージを取り戻さなければね」と言った。そして、いつものセリフを繰り返した。

「We have to agree to disagree.」

   僕らは「同意しない」ことに、「同意」しなければ。

   相手に耳を傾けて、意見の違いを認め合うということだ。

   ドンは続ける。

「僕は意見の違う人たちと、これまで何度も討論し合った。わかり合えないと思うこともある。でも諦めたら終わりだ」
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