岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち<最終回>
米国はこれからどこに向かうのか

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違いがあることが、この国の強みだ

   別の女性は、国歌を歌いながら涙ぐんでいた。

   ハリス氏とバイデン氏が宣誓した時には、あちらこちらから歓声が沸き起こった。

   幼稚園教諭の黒人女性スーザン(69、ニュージャージー州)が、「アメリカは今、より偉大な国になる過程にあるのです。抑圧の歴史を乗り越えた時に、より偉大な国になる。歴史に学ぶというのは、そういうことです」と訴えると、「イエス!」とあちこちから声があがる。

   その隣に立っていた青年が、「これ、僕のお母さん」と誇らしげに言うと、拍手が起こる。

   ゲイカップルの2人が、嬉しそうに「BIDEN HARRIS」の旗を振っている。

   別の場所では、人工妊娠中絶などに反対するグループの前に、それに反発するグループが集まってきて、大声で言い合いが続いた。が、互いに半分、言い合いを面白がっているようなところもあり、警官が間に入ることはなかった。

   自分の背丈以上の大きな星条旗を肩に立てかけた白人女性(53)は、聖書と米国憲法が書かれた冊子を手に、溢れる思いを抑えきれず、涙を拭いながら訴える。

「アメリカ人がひとつになり、平和に暮らすために、聖書に書かれた私たちのルーツに戻りましょう。私は政党で投票することはしません。私が愛するのは、トランプでも共和党でも民主党でもなく、私の国、アメリカなのです」

   周りにいた見知らぬ人たちが、「ありがとう」とその女性に声をかける。

   向こうでは、「オバマ大統領政権下で国外退去となった不法移民を合法的に受け入れよ」とメキシコ人女性らのグループが、スペイン語で訴えている。

   ここに身を置いて、なんと多種多様な人たちが集まっているのだろうと、改めて思った。皮膚の色も、人種も、見た目も。そして、考えも。

   そして、ここにいる人たちはそれぞれが、懸命にこの国のことを思っている。

   違いがあること、多種多様であることが、この国アメリカの強みなのだ。

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