岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち<最終回>
米国はこれからどこに向かうのか

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   「トランプ大統領、ありがとう」。2021年1月20日朝、首都ワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地前に集まった30人ほどのトランプ支持者たちが、トランプ氏が乗る大統領専用のヘリコプター「マリーン・ワン」を見上げ歓声をあげた。

   大統領としての最終の日、バイデン新大統領の就任式には参加せずに、トランプ氏はホワイトハウスを後にした。

   しばらくすると基地内で招待客を前に行進曲の演奏やトランプ氏の演説があったが、寒い風が吹く中、基地の外の沿道に立つ支持者たちには、祝砲の音しか聞こえない。

   そしてその後、トランプ氏が家族や側近と乗り込んだ大統領専用機が、この基地からフロリダ州に向けて去っていくのを私は支持者らとともに見守った。

  • バイデン新大統領の就任式が行われる連邦議会議事堂周辺を警備する州兵たち(2021年1月20日、筆者撮影)
    バイデン新大統領の就任式が行われる連邦議会議事堂周辺を警備する州兵たち(2021年1月20日、筆者撮影)
  • バイデン新大統領の就任式が行われる連邦議会議事堂周辺を警備する州兵たち(2021年1月20日、筆者撮影)

携帯電話で見る大統領就任式

   自分の上司と息子と横に並んで、大きな星条旗を掲げている白人女性が、目を真っ赤にしている。

「寂しいわ。苦しんでいる労働者階級の人たちの声に、トランプは耳を傾けてくれました。ここに来て、感謝の気持ちを伝えたかったんです。バイデンがアメリカをひとつにすると言っている。それをぜひ、実行してほしいと思います。この国の大統領として敬意を表し、彼のために祈り続けます」

   トランプ支持の旗を掲げるヒスパニック系アメリカ人の男性は、「4年後にはトランプにぜひ戻ってきてほしい」と話す。

   私はその後、大統領就任式が行われる連邦議会議事堂近くへ駆けつけた。議事堂の正面ではなく、距離も離れているため、式典の様子はまったくわからない。議事堂や連邦最高裁判所などの連邦施設の周辺は、上部に鉄条網が張り巡らされた2メートル以上の鉄製の柵で仕切られ、武装した州兵部隊が自動小銃を手にずらりと並ぶ。

   その脇の道路には警備のために、30人以上の州兵やシークレットサービスが睨みをきかせて並び、道を塞いでいる。

   そのすぐそばに、黒人女性が赤い帽子に黒いマスク姿で立ち、携帯電話の画面で式典の様子をライブで見ていた。国歌斉唱の時には、右手でピシッと敬礼し、ともに歌い始めた。

   女性の胸には、「Kamala Harris(カマラ・ハリス=新副大統領)」の文字と写真が印刷されたバッジが見える。

   その赤い帽子の女性リサ(57)は、「カマラ・ハリスが誓約する場に、その瞬間にいたい。カマラのエネルギーを肌で感じ、彼女への支持を示したい」と思い、カリフォルニア州サンフランシスコから飛んできたという。

「カマラは、私の住む地域や女性、そしてマイノリティの女性にとって、偉大なリーダーの役割を果たしてきました。そして、この瞬間に副大統領になろうとしています。政界での経験が豊富なバイデンと力を合わせて、多くの大事な変化をこの国にもたらしてくれるはずです。この国を癒すために、真のリーダーが必要です」
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