東京都東池袋の路上で起きた乗用車の暴走事故で、自動車運転処罰法違反の過失致死傷罪に問われた運転手の旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告の第4回公判が21年1月19日、東京地方裁判所で開かれた。
被害者参加制度を使って裁判に臨んでいる遺族の松永拓也さんは公判後、報道陣の取材に応じた。その中で、被害者や遺族に特別休暇制度を設けるよう厚生労働省に働きかけていくという見通しを語った。
「段階の第一歩すら踏み出していない」
松永さんは公判に有給休暇制度を用いて参加している。松永さんは会社を責める意図はないとしたうえで、犯罪被害者や遺族に特別休暇制度を設けてほしいと話す。
「被害者参加制度については裁判員裁判と異なり、厚生労働省からは特別休暇を犯罪被害者にも与えてくださいというお願いベースでしかないものです。明確なルールがない以上、会社はルール作りがしづらいと思います」
裁判員裁判においては労働基準法に基づき、裁判員の仕事に必要な休みを取ることが認められている。しかし犯罪などの被害者に対して厚生労働省は、「犯罪被害者等の被害回復のための休暇」を任意で設定できる法定外休暇として推奨するのに留まっている。
これについて代理人の高橋正人弁護士は、厚生労働省の対応を厳しく批判する。高橋弁護士によれば厚生労働省は、平成17年(2005年)第一次犯罪被害者等基本計画検討会において、1年以内に犯罪被害者などの休暇制度について調査や施策などを前進させると約束したと話す。
「ところがそれから15年、何も進んでいない。平成28年(2016年)第一犯罪被害者等基本計画検討会においても厚労省は何も進んでいないということを認めておりました。言ってみれば厚労省の怠慢だと思います。最初から義務化とは言いませんが、まずは努力義務、次は義務化、その次はある程度罰則を設けるなど段階を踏めば良いのです。しかし段階の第一歩すら踏み出していないんです」
休暇がなければ心理的な回復はできなかった
また妻の松永真菜さん(当時31)と娘の莉子ちゃん(同3)を失った松永さんは、事故当時のことをこう振り返る。
「妻と娘が事故に遭って、心の痛みと向き合わなければいけない、葬儀もしなければいけない、役所回りもしなければいけない。しかし遺族に与えられる休暇は、一般的に忌引き休暇。私の場合は3日でした。私は1か月間、心理的な面と物理的な面で会社に行けなかったので、その間いろいろな休暇を何とか繋ぎ合わせてきました。しかし、もしその休暇がたまたまなければ、おそらく心理的な回復はできなかったと思います」
松永さんは「これから犯罪被害者や遺族になる人には苦しんで欲しくない」として、今後自らも参加する関東交通犯罪遺族の会(あいの会)と共に厚生労働省に働きかけを行っていくという。現在日程は調整中で、分かり次第発表するとのことだった。
(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)