岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 
対立する両派が信じる「自分たちこそ真の愛国者」

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衝突が続くホワイトハウス前

   アンティファやBLM運動家にとって、ここは「聖地」だ。そこへトランプ支持者らが「Make America Great Again」の帽子を被り、トランプ支持の旗を掲げて、足を踏み入れるのは、彼らにとっては許せない。大きな十字架を掲げ、「イエス」について語り始めるトランプ支持のクリスチャンもいる。なぜわざわざ、ここへやってくるのか。

   彼らがトランプ支持者を激しく攻撃する場面を、私も何度も目撃した。中には、その場所が「BLM」にとって特別な意味があると知らず、たまたまそこを通りがかったトランプ支持者もいた。

   一方、トランプ支持者は「フェンスにびっしり貼られたサインで、ホワイトハウスが見えない。ここは公共の場ではないのか。フェンスは公のものではないのか」と反発する。

   するとBLM側は、「ホワイトハウスが見えない? フェンスを設置したのは、お前らが大好きなトランプだろ」と言い返す。

   「トランプ支持」のサインを彼らがフェンスに貼れば、BLM側がそれを破り捨て、トランプ支持者側がBLMのサインを破り捨てることもあった。

   ネディーンは「体を張って、私たちはこのフェンスを守っていたの。でも、私たちに身の危険が及ばないようにと、警官がこの辺りに配置されるようになった」と言った。

   「このフェンスを命がけで守る覚悟でいたの?」と私が聞くと、ネディーンは声を詰まらせ、しばらく何も言えなくなった。そして目を真っ赤にし、声を震わせ、続けた。

「死にたくはないわ。でもこの国で、こんなに長い間、黒人が脅かされてきたの。その話をすれば、『いい加減、乗り越えろよ』と片付けられてしまう。もううんざり」
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