岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 
対立する両派が信じる「自分たちこそ真の愛国者」

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「ファシストに反対するのがアンティファ」

   しばらくすると、全身黒に身を包んだ女性が現れ、黒地に白い文字で「TRUMP IS SICK(トランプはムカつく)」「TAKE TRUMP DOWN(トランプを引きずり下ろせ)」などと印刷されたサインを掲げ、議事堂を背に黙って立ち続けた。

   私が声をかけると、「今、ここ以外で抗議する場所は考えられない」と言い、手にしていた10枚ほどのサインをすべて、1枚ずつ見せてくれた。メッセージは異なるが、どれもトランプ大統領、白人至上主義、そしてテロリズムを非難する内容だった。

   彼女が着ていたパーカーには、「TRUMP IS A DANGER TO US ALL」(トランプは我々全てにとって危険)と書かれている。

   女性は「記事には書かないで」と言ったが、最後には名前を教えてくれた。自分は「アンティファ(ANTIFA)」だと言った。

「アンティファ(ANTIFA)はファシストに抗議する人たちのこと。私はもちろん、アンティファであることを誇りに思っているわ。あなたがファシストに反対するなら、あなたもアンティファよ。ソーシャルメディアでは『我々を乗っ取ろうとしている地下組織』とかバカげたことが言われているけれど、何を乗っ取るっていうの? 私たちはファシズムが根を張らないように見張っているだけ。
 ファシズムの下では、あなたの書くことが気に入らなければ、自由に記事を書く権利も写真を撮る権利も奪われるのよ。独裁政権でナチスドイツや中国がしていることと同じ。私たちが闘っているのは、大きく根深い敵。アメリカはトランプを選び、こんな酷いことを4年間も許してしまった。アメリカよ、恥を知れ(Shame on us.)就任式まで何が起きるかわからないから、私は今もここに立っている。あの人たちは政権の座を奪えなくとも、命を奪うことはできるから」
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