「REMOVE TRUMP (トランプを追い出せ)」「THE TIME IS NOW(時は今だ)」――。異例の厳戒態勢の中、バイデン米次期大統領就任式(2021年1月20日)の準備が着々と進む首都ワシントン。
4年間にわたるこの連載の終盤に、連邦議事堂乱入事件(1月6日)へ至るまでの3回の現場ルポ、その後「フェンスと兵士に囲まれたワシントン」に怒る市民について書いた。今回は、「トランプよ、出ていけ!」と最後の最後まで声をあげ続ける人たちを取り上げる。
「IMPEACH(弾劾せよ)」
議事堂乱入事件後、警備強化のため、その周辺に2メートルほどの高さのフェンスが設置された。
1月12日、フェンスの手前で1人の男性ビル(70)が、約2メートルの縦長のサインを掲げて立っていた。水色の文字で縦に「IMPEACH(弾劾せよ)」と書かれている。
民主党が大多数を占める下院は先週、議事堂乱入を煽ったとして、トランプ大統領の弾劾訴追を決議した。上院で弾劾裁判が行われることになる。
ビルは、オレゴン州ポートランド郊外から抗議のために訪れた。抗議はその日が5日目だった。彼は一気に、私にこう語った。
「2021年1月6日は、アメリカの恥辱として記憶に刻まれる日だ。共和党とFOXニュースの支持を得た日和見主義で利己的な大統領に駆り立てられ、この国が国内テロリストたちに襲撃されたんだ」
傍らでビルを見守る妹が、私にこう話す。
「トランプは、この責任を取るべき。兄も私も、この国を愛するアメリカ人。愛国者であることを示すために、ここに来たの。この国が力を合わせ、平和に繁栄することを、心から願っている」