ネットの誹謗中傷、少しでも減らすために SNSの善意が生んだ啓発広告「#この指とめよう」渋谷に登場

   広告機構AD FOR GOODは2021年1月18日、SNS誹謗中傷を止めるためのメッセージ広告「#この指とめよう」を東京都渋谷区に掲出した。掲出費用はクラウドファンディング上で集められており、多数の著名人が賛同していた。

   この企画を主催した小竹海広(おだけみひろ)さんは、J-CASTニュースの取材に対し、「感謝の気持ちでいっぱいです」と今の心境を語る。

  • SNS誹謗中傷を止めるためのメッセージ広告「#この指とめよう」
    SNS誹謗中傷を止めるためのメッセージ広告「#この指とめよう」
  • 全10種類の広告
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  • 小竹海広さん(2020年12月撮影)
    小竹海広さん(2020年12月撮影)
  • 「The Breakthrough Company GO」の小竹海広さん(左)と大長敬典(右)さん。
    「The Breakthrough Company GO」の小竹海広さん(左)と大長敬典(右)さん。
  • SNS誹謗中傷を止めるためのメッセージ広告「#この指とめよう」
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  • 小竹海広さん(2020年12月撮影)
  • 「The Breakthrough Company GO」の小竹海広さん(左)と大長敬典(右)さん。

屋外広告を出すことに迷いもあった

   AD FOR GOODは、「CAMPFIRE」(東京都渋谷区)と「The Breakthrough Company GO(以下GO)」(東京都港区)の2社による、社会課題を解決するための広告を掲出する非営利プロジェクトだ。この第一弾として、GOでコピーライターを務める小竹さんは、「#この指とめよう」を合言葉に、SNS誹謗中傷を止めるための啓発広告を制作した。

   広告掲出費用は20年10月28日から約1か月間、CAMPFIREのクラウドファンディングで集められた。このプロジェクトには、脳科学者の茂木健一郎さんや、漫画「ちはやふる」作者の末次由紀さん、参議院議員の蓮舫さんなど多くの著名人が賛同している。SNSでも拡散され、企業や個人からの支援で321万6386円が集まった。

   そうして出来上がった広告が21年1月18日、渋谷スクランブル交差点近くのMAGNET by SHIBUYA109 ビッグボードに掲出された。

   J-CASTニュースの取材に対し小竹さんは、「緊急事態宣言の発令もあり、屋外広告というメディアで啓発広告を行うことに迷いはありました」と話す。

「ですが一方で、コロナ禍で誹謗中傷は加速するという懸念もありました。 私たちが独自でマーケティングツールを使って調査したところ、 実際に2019年は2020年の1.25倍、誹謗中傷をする人がユニークでいることがわかりました。
そのためコロナ第3波が起きている2021年の今、 アクションを起こすことが大切だと考えて実施に踏み切っています」

   そのうえで、 屋外の交通量が減る分SNS上での拡散などに協力してほしいと訴えた。

一般社団法人「#この指とめよう」を設立

   ビジュアルやコピーは、クラウドファンディング時に示された見本から一新されている。ビジュアルはイラストから写真に変更され、プロジェクト関係者の実際の指の写真が用いられた。

   コピーについては「送信ボタンを押すなら、だれかの背中を押す言葉にしたい。」、「誹謗中傷した人を罵倒するのも、誹謗中傷です。」といった既存のものに加え、

「有名税も、廃止へ。」
「人間の怒りのピークは、6秒。その瞬間で変わる人生もある。」
「リンチはたまに、正義感から生まれる。」

などが追加された。支援者らの声を反映したものだという。

   小竹さんは、支援者たちにこう感謝を述べる。

「まず支援者の方々、支援企業様、メディアを提供いただいた媒体社様、報道関係社様への感謝の気持ちでいっぱいです。 本当に、本当に、ありがとうございます。 皆さま1人1人の力で奇跡が起きました。おかげさまでSNSには悪意だけでなく、善意が沢山あるということを改めて感じることができました」

   そして今後もこのような活動を継続するために、小竹さん自らが理事となり「一般社団法人この指とめよう」を設立するという。SNS上でリアルタイムに起こる誹謗中傷を止める広告の掲出や啓発オンラインイベントの実施、若年層向けのSNS教材の開発などの活動を予定している。

   誰かに強制されるのではなくユーザー自身が主体的に言葉を選んで欲しいという想いから、小竹さんは今後も問題提起を続けていく。

「トランプ元アメリカ大統領のTwitterアカウントが凍結されました。 SNSプラットフォームに言論の自由の制限を全て任せる未来でいいのか?がいま世界に問われていると思っています。 まずはSNSユーザー1人1人の意識を向上し、安全で自由な言論空間を実現することが大切だというのが私の立場です。 新しい時代の言論をいろんな意味で守るために、問題提起を継続します」

(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)

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