コロナ禍以前にも検討
東京駅と新大阪駅を結んで1964年に開業した東海道新幹線は、計画段階で貨物列車の運行も想定され、用地買収も一部で進んでいた。だが、急拡大した旅客需要への対応が優先されたため貨物列車は実現せず、旅客の車両で小荷物を運送する「レールゴーサービス」が一部区間で営業を続けている程度だ。
それでも新幹線で荷物を輸送するアイデアはコロナ禍の前にも細々と検討は続けられており、九州新幹線で貨物を旅客列車に乗せて運ぶ構想は2019年1月に地元の新聞が報じていた。九州新幹線は旅客需要が他の新幹線と比べて乏しいこともあり、JR九州は佐川急便と2020年8月に協業に関する基本合意を結び、旅客車両の使っていない業務用空間を活用して宅配便貨物を輸送する検討を進めている。
コロナ禍の外出自粛で新幹線の旅客利用が減っている一方、インターネット通販は活況になっているためトラック輸送が増加傾向になっている。コロナ禍が続けば、新幹線の貨物輸送はより具体化していくかもしれない。とはいえ、落ち込んだ旅客需要を補うというのは過大な期待だろう。高速で大人数の旅客輸送を支えてきた新幹線のビジネスモデルが見直しを迫られていることに変わりはない。