航空会社に比べて目立ちにくいが、鉄道会社も新型コロナウイルス禍で乗客の減少が著しく、業績が悪化している。特に長距離の旅客輸送を担う新幹線は、旅行支援事業「GoToトラベル」が実施されていた期間を除けば乗客減少が著しく、2020年から2021年にかけての年末年始も帰省ラッシュは起きなかった。公共交通機関の役目として一定の便数を運行しなければならないが、空気を運んでいるような車両も目立つ。そこでJR各社が取り組んでいるのが、新幹線で生鮮食品を運ぶ試みだ。
所要時間の大幅減、渋滞の可能性も低い
JR東日本は2020年10月から、東北新幹線の旅客車両を使って仙台駅(仙台市)から東京駅に向けて新鮮な魚介類を運んでいる。宮城県石巻市で水揚げされた魚介類を箱に詰め、新幹線の業務用スペースに積み込み、東京駅構内にある飲食店に届けるものだ。新幹線の速さと定時性を生かした取り組みで、トラック輸送と比較して所要時間は大幅に削減され、渋滞や事故に巻き込まれて遅れる可能性も低い。
鉄道による鮮魚輸送としては、近畿日本鉄道(近鉄)が宇治山田駅(三重県伊勢市)から大阪上本町駅(大阪市)まで、平日に毎朝1本運行させていた行商人専用の「鮮魚列車」が知られるが、こちらは利用減少に伴って2020年3月のダイヤ改正で半世紀にわたった運行が終了した。コロナ禍をきっかけに、新幹線で期せずして「鮮魚列車」が復活した格好だ。
新幹線で生鮮食品を輸送する動きは他のJRにも広がっており、JR九州は2020年12月に九州新幹線の旅客車両を使って鹿児島中央駅(鹿児島市)から博多駅(福岡市)まで農作物を運ぶ試みを実施した。運んだのは、その日の朝に収穫したばかりのソラマメやミカンなどで、新幹線から降ろしてすぐ、博多駅構内で開催していた鹿児島の特産品フェアで販売した。