「現実を受け入れるしかないという無力さがあった」
全てが順調に進んでいるかに思えた。そんな矢先、2度目の緊急事態宣言と時短要請に直面した。鳥羽さんは1月7日、自身のツイッターで「色々悔しい。またかよ。納得できない部分もある」と率直な思いを伝えた。当時の心境を鳥羽さんは「今まで積み上げてきたものが崩れていく。現実を受け入れるしかないという無力さがあった」と振り返る。
それでも、鳥羽さんは前を向いた。導き出したのが、従来24時までだったディナーの時間を短縮した上で、その穴埋めとして、これまで営業してこなかった朝、そして土日祝日のみ開けていた昼に「ディナー」を提供するという形態だ。まさに「逆転の発想」だった。
「以前の緊急事態宣言時と違い、リモートワークのあり方が変わってきていると感じた。より自由な時間の使い方が可能になったことで、夜ではなく、朝や昼にしっかりしたご飯を食べたいというニーズも生まれているんじゃないかと思い、導入を決めました」(鳥羽シェフ)
「朝ディナー」のコースは全8皿で6000円、「昼ディナー」は夜と同じ全10皿で1万円だ(いずれも税抜き)。「朝ディナー」の時間帯は基本的に酒類の提供ができないため、ノンアルコールビールなどのペアリングを提案しているという。
料理を朝と昼に提供する場合、それぞれを「モーニング」「ランチ」と位置づけ、安価で簡易的に売り出す選択肢もある。それでも「2時間半(のコース時間)をどう提供するかを考えた時に、レストランの『本意気』であるディナーの体験価値を朝と昼に作り上げたかった」と、あえて「モーニング」や「ランチ」にはしなかった理由を語った。
鳥羽さんは7日に朝・昼・夜の3部営業を始める意向を自身のツイッターで表明。すると、すぐに「11時くらいに美味しい朝食はあり」「朝sio行ってみたいなあ」という好意的な声が寄せられた。店の予約が翌8日から始まると、緊急事態宣言が終わる予定の2月7日まで、あっという間にその枠は埋まった。