Eテレと文科省ギガスクール構想
また、保有する経営資源の有効活用を考えてもいいはずだが、放送波の整理は、衛星波1つ、音声波1つにとどまっており、地上波にはまったく言及していない。
本コラムの読者であれば、筆者が昨年Eテレ周波数の売却で世論を賑わしたことをご存じだろう。筆者は、Eテレの周波数を整理し、文科省が新年度からはじめる「ギガスクール構想」にのっかり、Eテレのコンテンツをインターネットで流し、文科省ギガスクール予算の獲得を含めて収益化することを主張したのだ。これは、今回のNHKの中期計画の3つの柱のうち、(1)と(2)に相当するもので、NHKの構造改革そのものだ。
同時に、Eテレ周波数を携帯事業者が利用できるようになるので、今後の通信事業の発展やさらなる携帯料金値下げにもつながる、日本全体の構造改革にもなり得るものだ。
今回のNHK中期経営計画を作った人たちは、文科省ギガスクール構想の動きをまったくわかっていない。これは、文科省の行う最優先一丁目一番地の施策なので、NHKが常に強調する「あまねく伝える」という理念には反するはずない。そもそも経営計画は、社会の動きを読みながら、自社で最適な計画を作るものだが、NHKは自分の世界に閉じこもり、まったく文科省など世の中の動きが見えていないのだろう。
要するに、(1)保有するメディアの整理・削減、(2)インターネット活用業務を掲げておきながら、それぞれ不十分な施策しか打ち出せず、スリム化も不十分、受信料値下げも不十分となる。
というわけで、筆者からみたNHK中期経営計画は及第点はつけられない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。