公立小学校「35人学級へ」 その最大の課題とは

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   公立小学校の1学級の児童数(学級基準)について、現行40人(小1は35人)から35人に引き下げられることになった。2021年度から小2で開始し、5年かけて、2025年度までに全学年で完全実施する。小学校の学級基準の一律引き下げは、1980年度から40人に引き下げられて以来、約40年ぶり。文部科学省は2021年1月召集の通常国会に必要な改正法案を提出する。

   現在、公立小中学校の1学級の人数は小1だけが35人以下で、小2~中3が40人以下。ただ、今でも小2は教員の追加配置や自治体の努力で実質的に35人以下になっているといい、2021年度の教職員増員は計約740人、国の負担は約16億円にとどまる。

  • 小学生の教育への影響は?(写真はイメージ)
    小学生の教育への影響は?(写真はイメージ)
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新型コロナウイル感染拡大の影響も

   小3以上でも、全国の小学校の約9割の学級は35人以下になっており、36人以上の学級があるのは東京など大半が都市部。それでも、2022年度以降は、小3~小6を毎年1学年ずつ35人以下に引き下げると、少子化による自然減はあるものの、完了する25年度までに計約1万2800人の教員を増やすことが必要になる。22年度以降の財源は、各年度の予算編成で交渉していくことになる。

   少人数学級は文科省としてはきめ細かい教育のために必要との認識では一貫しているが、厳しい財政事情の中、財務省は効果が疑問だとして反対し、逆に小1も40人学級に戻すよう求めていたほど。その風向きが変わったきっかけは、新型コロナウイルスの感染拡大だった。2020年春、最長3カ月間もの休校を強いられたことを受け、子どもたちがソーシャルディスタンス(社会的距離)を取って安心して学べる環境を整備すべきだとの機運が与野党や地方自治体で高まった。その流れで、政府が7月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」に「少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備」と明記された。

   これを踏まえ、文科省は2021年度予算の概算要求の段階では、法改正による一律少人数学級化と、教員の追加配置による実質的な対応の2つのケースを想定し、金額を示さない「事項要求」としていたが、一律の少人数学級のチャンスと見て、小中学校全体の「30人学級」の旗を押し立てて正面突破を図った。財務省は抵抗したが、前記のように、小学校の学級の9割が実態としてすでに35人以下にあり、財政負担は限定的だったこともあり、小学校に限り35人とすることで政治決着した。予算編成の最終盤、20年12月14日に全国知事会の飯泉嘉門会長(徳島県知事)が地方6団体を代表して菅義偉首相に「総理の英断を」と少人数学級実現を迫ったことも追い風になった。

   また、基本的な教員の数は児童生徒数で決まるから、少子化で学級が減ると、教員数も減ることになるが、文科省は学級の生徒数を減らし、学級数の減少を回避し、教員数を維持したいと考えた、という側面もある。現状の教員数を維持すれば、財政負担を大きく増やさなくても少人数学級を実現できるということだ。これに対し財務省は、学級数が減れば教員も減ってしかるべきだという原則論を唱え、なかなか折り合わなかった。それが、コロナ禍の余波で、文科省の要求が一部実現した。

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