2021年の「成人の日」は、1月11日だ。新型コロナウイルスの感染拡大により、この日に予定されていた成人式の式典の中止・延期は多い。一方で予定通り開催する自治体もあり、クラスター発生の原因になるのではと不安視する声がインターネットで上がっている。
感染症を専門とする医師の岩田健太郎教授(神戸大学)は自身のブログで、新成人に「成人式には行かないで」と呼びかけた。
開催の自治体もあるが...「怖いな」
1月8日に緊急事態宣言が発令された1都3県では、複数の自治体で式の中止・延期などが発表されている。
東京23区では杉並区以外の22区で、11日に開催予定だった式典が中止や延期となり、市部でも中止のところが多い。神奈川・千葉・埼玉ほか地方でも多くの自治体が、式典の中止を発表している。こうしたところでは、式典のライブ配信や、収録したビデオレターを公開するなどの措置を取る場合もあるようだ。
一方で、予定通り開催する市区町村の多くでは、ウェブサイト上などで注意事項を記載している。
例えば横浜アリーナ、パシフィコ横浜ノースの2会場で、それぞれ4回ずつ式典を実施する横浜市。「成人式前後の会食の自粛」「式典中の会話を控えること」「会場内でのマスクの着用」など6点を順守するように呼びかけている。
ツイッターでは、
「横浜市、明日は成人式やるんだ... それで喜ぶ人も多いのだろうけど、私は怖いな」
「成人式は行かない 首都圏から帰省してる人結構居るみたいだし普通に怖いよ...」
「絶対に成人式が原因でクラスター発生するぞ」
など、成人式をきっかけに感染が広がることを不安視する声が上がっている。全国で新成人が最多、かつ緊急事態宣言下の横浜市で式典が行われる事実に、驚いている人が多い印象だ。
式典後の行動が感染拡大につながる恐れ
岩田健太郎教授は2021年1月10日、「成人式には行かないで」と題したブログ記事で、若者にとって新型コロナウイルスは「ほとんど『ただの風邪』」だが、「皆さんのご両親や、祖父母の方々は違います」と綴り、こう続けた。
「想像してみてください。もし、みなさんのご両親やおじいさん、おばあさんが『あなたが』持ち込んだウイルスのために病気になってしまったら。それが理由で長くて苦しい重症治療を受け、場合によっては死んでしまったら。それがもし、成人式がきっかけになったものであったならば。
ぼくだったら、そんな体験をしたら悔やんでも悔やみきれないことでしょう」
ただ、岩田教授が訴えるのは「成人式そのものの感染リスクが高い」という点ではないようだ。
岩田教授は、自身が人口1万人に満たない町で育ったという。こうした場所では新型コロナウイルス感染症はほとんど流行せず、「周りに人がいないので、多くの場合はマスクすら不要」だとする。
しかし、人口が少ない町の若者の多くは進学や就職で都市に出ており、成人式のために帰省してくるという。たとえ式典での感染対策が徹底されていても、その後の行動が感染拡大につながる可能性があると指摘する。
「『久しぶりにあったんだから、ちょっと飲みに行かないか』という話になるかもしれません。もう、お酒も飲めるんだし。居酒屋じゃなくたって、友達のうちに集まることだってできるでしょう。久しぶりの旧友にあえば気も休まります。それでなくても、この1年は気が休まらなかった1年だったのですから。大声で近況を知らせ合う、ということも十分にありそうなことです。昔からの友達に会えば、ハメを外したくなるのが人情です。
そうやって都会から持ち込まれたウイルスが田舎で広がります」
医師の木下喬弘(手を洗う救急医taka)さんは1月10日、「儀式としての成人式そのものがリスクが高いとはどうしても思えないです」と、次のようにツイートした。
「マスクをして記念に写真を撮って解散すればなんの問題もないと思うのですが。
行動変容をお願いするのなら、その後の飲み会を控えてもらうべきなのでは?
新成人を一律に信用しない態度で若い人に共感が得られるでしょうか」
しかし、
「ただ、一点『帰省がリスク』ということには疑いの余地がないので、これが中止が避けがたい理由なのであれば、致し方ないと思います」
とも述べている。
成人式には行かないで https://t.co/rjiCACfRYh
— 岩田健太郎 Kentaro Iwata (@georgebest1969) January 9, 2021