岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
「この国のために戦う」と議事堂に向かった支持者

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「暴力的な手段に訴えることはしない」

   その後、トランプ大統領が1時間あまり演説し、「死に物狂いで闘う。死に物狂いで闘わなければ、もう国はない(We fight like hell. And if you don't fight like hell, you're not going to have a country any more.)」と訴えかけた。

   支持者たちの反応から、「この人たちはその時が来たら、本当に戦うつもりかもしれない」と私は感じた。

   トランプ氏が行進について、「平和的に愛国的に(peacefully and patriotically)」と呼びかけたとおり、議事堂への行進そのものは平和的に行われた。

   独立戦争当時のコスチュームで参加した人たち、パンダの着ぐるみに身を包む人、子供を肩車する男性や高齢者、車椅子で行進する人たちもいて、現場にいても殺気だった雰囲気は感じられなかった。

   自警団のメンバーの男性が私に話したように、「自分たちは『法と秩序』を重んじる。暴力的な手段に訴えることはしない」と暴力を否定する人も多かった。

   ワシントンでは銃携帯の規制が厳しいため、武器を隠し持ってきた人たちもいたが、「自衛のためだ」と「こちらから使うことはない」と強調していた。

   少なくとも議事堂に向かった人たちの多くは、支持者のごく一部が議事堂内に乱入するとは、想像もしなかったのではないかと思う。

   次回のこの連載では、事件が起きた議事堂での様子を伝える。(次回に続く)

   

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

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