ドナルド・トランプ米大統領を支持するデモ隊が2020年1月6日(現地時間)、首都ワシントンの連邦議会議事堂に乱入した騒動で、極左団体「ANTIFA(アンティファ)」のメンバーが支持者に扮(ふん)していたとの言説が日本で拡散している。
その根拠として、顔認証ソフトが特定したとされているが、提供企業はこれを否定。情報源となった記事も訂正された。複数の米メディアが伝えた。
「トランプを貶めるためのアンティファだったとは」
発端となったのは、日本の右派系政治まとめサイト「アノニマスポスト」の7日付記事「<ワシントンタイムス>国会議事堂を襲撃したメンバーを顔認証システムがアンティファと確認」(原文ママ)。
米紙「ワシントン・タイムズ」の6日付記事と、その内容を引用したニュースサイト「大紀元(エポックタイムス)」日本版の記事を紹介し、
「トランプ支持者は、彼らの一人を装ったアンティファのメンバーが水曜日に米国議会議事堂を襲撃した抗議者に潜入したと言います」
「退役軍人はワシントンタイムズに、XRVision社がそのソフトウェアを使用して抗議者の顔認識を行い、2人のフィラデルフィアのアンティファメンバーを上院内の2人の男性と照合したと語った」
などと伝えた。
ブログは8日昼時点で1万以上リツイート(拡散)され、「やっぱり。そうだと思ってた」「これが真実」「トランプを貶めるためのアンティファだったとは。バイデンが頼んだの?」「日本のマスゴミは報じない」と陰謀論への傾倒やメディアの偏向報道への憤りを表明する書き込みが相次いだ。
特定したのはQアノン支援者ら
しかし、情報源となったワシントン・タイムズの記事は8日までに訂正版に差し替えられ、
「この記事の以前のバージョンでは、XRVision社の顔認識ソフトが水曜日に国会議事堂を襲撃した暴徒の中からANTIFAのメンバーを特定した、と記載しましたが間違っていました。XRVisionはANTIFAのメンバーを特定しておらず、弊紙はXRVisionに謝罪しました」
と事実誤認があったとした。
CNN、USAトゥデイ、バズフィードなどの米メディアによれば、XRVision社は弁護士を通じてワシントン・タイムズに抗議し、事実無根だとして記事の撤回と謝罪を求めていた。同社が特定できた人物は、ネオナチ組織の2人のメンバーと、極右系陰謀論集団「Qアノン」の支援者だったという。
米のファクトチェックサイト「ポリティファクト」も「False(誤り)」と判定している。
なお、アノニマスポストは8日昼現在までに、記事の訂正をしていない。