新型コロナウイルスの感染拡大が広がる東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県への緊急事態宣言発令が2021年1月7日に決まる。飲食店には、20時までの時短営業要請が検討されている。
外食業界は大きな打撃が見込まれるが、独創的なアイデアで乗り切ろうとするカフェに注目が集まっている。
「皆さま喋らず食事と飲み物と音楽を楽しんでください」
「徹底的に感染予防をするために店内は【私語禁止】で営業する事にしました」「前々から一度試みてみたいと思ってた、昔のJAZZ喫茶の様な営業スタイル(に変更します)」
JR高円寺駅から徒歩1分にある個人経営のカフェ「yummy(ヤミー)」(東京都杉並区)の店主が1月5日、フェイスブックにこう書きこんだ。
緊急事態宣言が出される7日から、23時までだったディナータイムを20時に短縮し、新たな営業方針として「私語禁止」を打ち出した。
理由は、新型コロナの感染対策を徹底するためだ。
「きっかり20時閉店です。ただ、20時までなら今まで通り店内での飲食がいいのかというと、それも疑問です。結局、飲食時にはマスクを外すのでそのままおしゃべりしてしまいます」
「2人で来ても、3人で来ても良いです!!お酒を飲んでも良いです!!でもおしゃべりは禁止です!!これを徹底した上で緊急事態宣言最中の店内営業をやっていこうと思います」
しかし、ルールを課すだけでは店の居心地が悪くなる恐れがある。そこで、昔懐かしい「ジャズ喫茶」の要素を取り入れることも決めた。
「大きなスピーカーから大音量で流れるJAZZ。お客さんは誰も喋らずにジッーと音楽に耳を傾ける。昔のJAZZ喫茶はそうだったらしいです」
「yummyはもともとジャズにこだわったお店ではないので、音楽はさまざまなジャンルになりますが、yummy自慢のオーディオ機器から今までにはないボリュームで最高の音をお届けします。本当に素晴らしいオーディオです!これは、、、ワクワクします!!皆さま喋らず食事と飲み物と音楽を楽しんでください」
同店はアンプやスピーカー、レコードプレーヤー、エフェクターボードなどこだわりの音響機器を揃えており、その特徴を生かす格好だ。
フェイスブックでは「皆さまコロナがどうか早く収束しますように、yummyで感染者が出ないように、あなたも私も感染しない様に考えた策です。どうぞご理解、ご協力、お願いいたします!!」と呼びかける。
SNSで好評、店主の思い
この取り組みは大きな反響を呼んだ。
ツイッターで投稿が共有されると、3000以上のリツイート(拡散)を集め、「こういう挑戦は個人的に大好き」「むしろ行きたくなった」「2021年に蘇る、『私語禁止』というジャズ喫茶文化。行ってみたい!」と好意的な声が相次いだ。
会話は筆談やメッセージアプリでしてはどうか、などと提案も多く寄せられている。
店主の羽根真紀さんは6日、J-CASTニュースの取材に「前回の緊急事態宣言下では、店内営業を止めてテイクアウトに切り替えました。こちらは好評だったのですが、店内営業を再開して、お客さんが食事されている姿や常連さんがいらっしゃることに安心感がありました。なので、いかに店内で安心して飲食を楽しめるかを重視したいと思い、今回のアイデアを考えました」と話す。
店ではマスク着用や大声での会話を控えるよう注意喚起をしてきたものの、飲酒した客の声が大きくなってしまうなど感染リスクが払しょくできなかった。「楽しそうなお客さんを邪魔したくない」「注意の仕方が難しい」との思いもあったが、「とはいえ、これだけ都内で感染が拡大して、20時までならこのような状況でもいいというのは違う」と会話の禁止に踏み切った。
「その上でお客さんに楽しんでもらえる方法はないかと思い、オープン当初から音楽にこだわって店の色としていたので、ジャズ喫茶のような営業スタイルではどうかと考えました。オーディオ好きのお客さんもいらっしゃるため、コロナに関係なく前々からオーディオをじっくり聞くイベントをやってみたいと思っていました」(羽根さん)
初の試みのため、注文方法や音楽のボリュームなど、運用面は試行錯誤しながら決めていくという。音楽は、ジャズ、歌謡曲、ボサノヴァなどのジャンルから、その時の雰囲気で選曲する。
1月7日以降の営業時間は、ランチタイムが11時〜16時、カフェタイムが14時〜17時、ディナータイムが17時〜20時。