新型コロナウイルスの感染拡大で、旅館やホテルの客足が鈍り、価格競争も激しくなっている模様だ。
その結果、借金が膨らんで、貸し渋っている銀行もあるという。政府が1都3県で緊急事態宣言を出し、GO TO トラベル停止も全国で延長する方向が報じられているが、そうなった場合、今後への影響はどの程度あるのだろうか。
石垣島のホテルは、「緊急事態宣言出たら大打撃」と危機感
沖縄県石垣市内のリゾートホテル「THIRD石垣島」は、Go Toが停止された年末年始の期間、独自に35%割引を導入して話題になった。さらに、菅義偉首相が2021年1月4日の会見で、1都3県で緊急事態宣言を出す方向だと述べると、ホテルを運営するスターリゾートの佐々木優也社長は、ツイッターでこうつぶやいた。
「東京都が緊急事態宣言出たら石垣島にある弊ホテルも大打撃を受けます」
それは、客の50%以上が1都3県から来るからだという。佐々木社長は、「それだけのお客様からキャンセルが入ると考えただけで、胃が痛い... 首都の経済が止まると、間違いなく地方経済も止まります」と漏らした。休業すれば、航空運賃のキャンセル料を支払わなければならない客が出たり、その連絡に時間を取られたりするため、休業はしないそうだ。
スターリゾートの広報担当者は5日、J-CASTニュースの取材に対し、現状をこう明かした。
「年末ごろから1都3県のお客さまからのキャンセルが続き、予約が100%から80%ぐらいに下がって、現在も状況は変わらないですね。Go To停止の延長が確定すれば、キャンセルする人も増えるのではないかと考えています」
12日以降も35%割引を続けるのかについては、「他のアイデアも含めて、考えているところです。島の医療がひっ迫し、移動するなという話になれば、難しいでしょうね」と話した。
大手ホテルが破格の値段を付けても、客が入らないような状況
年末年始期間は、石垣島のこのホテルのように独自に35%割引を導入したり、同じ料金でグレードの高い部屋に泊まってもらったり、各宿泊施設は、客の確保に苦労しているようだ。
この期間に公式サイト予約客に35%割引を導入した星野リゾートは1月5日、今後について広報担当者が取材にこう答えた。
「割引については、政府発表に向けて確認中で、何も決まっていません。12月中旬から感染が急増して、新規の予約は足踏み状態で、客足が鈍くなっています。発表があれば、キャンセルが急増する可能性があり、それを待って対応を考えることにしています」
日本旅館協会の担当者は同日、年末年始からの状況について、取材に次のように話した。
「年末年始は、キャンセルが多かったと聞いており、緊急事態宣言が出れば、厳しさが増してくるでしょう。東京、大阪などの都市部は、特に稼働率が低く、価格競争も激しくなっています。大手ホテルチェーンが破格の値段で部屋を出し、それでも客が入らないという話も聞いています。客が少なければ、日によっては、マイナスが少ない休館にしてしまうところも出ていますね」
過当競争のような状況になって、資金繰りに苦しむ宿泊施設も出てきているという。
「春に緊急融資を受けて、夏場を乗り越えたところも、年末年始の収支が厳しくなって、追加融資を望んでいます。12月に金融機関との意見交換会を全国9か所で行いましたが、借金が膨らんでおり、銀行の見る目も厳しくなっていますね。銀行が融資先を選別しており、貸し渋りをしているとの声も聞かれるようになりました」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)