菅義偉首相は2021年1月5日、首都圏1都3県を対象とする緊急事態宣言の発令を7日に決定する方針を自民党の役員会で表明した。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻さを増すなかでの対応で、今夏の開催を目指して準備が進んでいる東京五輪への影響が懸念される。東京五輪まですでに200日を切っており、五輪開催へ向けて不安が広がるなか予断を許さない状況になってきた。
大晦日の「最多」確認に続き、1月5日には2番目に多い人数
新型コロナウイルスの影響で今夏に延期された東京五輪。その開催地である東京がウイルスの猛威に脅かされている。東京都内では5日に新たに1278人の感染が確認された。これは2020年12月31日の1337人に次いで2番目に多い人数だ。政府による緊急事態宣言、そして収束する気配が見えないウイルスの感染拡大。このような状況下で、今夏に予定する東京五輪は開催出来るのだろうか。
英紙「ガーディアン」(WEB版)は21年1月4日(現地時間)、ウイルスの感染拡大が止まらない東京の現状を踏まえ、東京五輪開催に悲観的な論調で記事を掲載している。記事では、東京都が中央政府に緊急事態宣言を要請したことに触れ、ヨーロッパのほとんどはこれまで以上に厳重に封鎖されており、東京五輪の開催を期待することは科学ではなく、信仰行為のように感じられるとしている。
五輪開催へ逆風が強まるなか、日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長は開催へ向けて自信を見せた。スポーツ紙などの報道によると、山下会長は5日、オンラインで職員に年頭のあいさつを行い、東京五輪開催に「揺るぎない決意を持っていると」と述べたという。
箱根駅伝は18万人が沿道で観戦
その一方でネット上では五輪開催に関して懐疑的な声も上がっており、開催を推し進める政府、JOCと「温度差」が見受けられる。開催にあたっての費用や経済の立て直しを優先させるべきとの声もみられ、なかには運営スタッフやボランティアを心配する声も上がっている。また、五輪の準備期間にあるアスリートが受ける影響も懸念され、開催に向けて課題は山積している。メディアによる比較的新しい世論調査結果では、たとえばNHKが20年12月15日、21年に延期された東京五輪・パラについて、「中止すべき」32%、「開催すべき」27%だったと報じている。東京での新規感染者確認数が初めて1000人を超えるのは、この結果発表以降のことだ。
また、五輪開催にあたり観客の上限などは今後、判断される見込みとなっているが、人気種目であるマラソンの沿道観戦も課題のひとつだ。年明けの2日と3日に行われた箱根駅伝では、主催者が沿道応援の自粛を求めるも約18万人がコース沿道で観戦した。五輪本番では多くの人出が予想されるなか、どのように対応していくか。東京五輪開催に向けて厳しい状況が続きそうだ。