ヘルスケア事業にはほかにも好材料
実際、業績はコロナ禍にあって全体として健闘している。野村証券が11月20日に目標株価を6200円から6500円に引き上げたリポートで端的に「ドキュメント(オフィス向け複合機等)の回復は鈍いがヘルスケアの好調で相殺」と指摘した。
2020年9月中間連結決算をみると、売上高は前年同期比11.9%減の9973億円、営業利益は38.6%減の564億円。かつての主力商品、写真フイルムの需要蒸発により、富士フイルムHDは今や「ヘルスケア&マテリアルズ(電子材料等)」部門と「ドキュメント」部門が2本柱。このうちヘルスケア&マテリアルズは売上高が前年同期比3.9%減、営業利益は1.6%増で、ドキュメントは売上高15.5%減、営業利益は48.4%減だった。これにより、営業利益額はヘルスケア&マテリアルズがドキュメントを上回った(前年同期はドキュメントの営業利益額の方が多かった)。
ヘルスケアについては特にバイオ医薬品の製造・開発を受託する「バイオCDMO」事業が好調だ。写真フイルムで培った生産管理の技術が生かされているといい、売上高1000億円の目標を今期(2021年3月期)に1年前倒しで達成する見通しだ。アビガンの承認見送りは多少痛いが、ヘルスケアには他にも画像診断や再生医療など今後に期待できる事業がある。事務機器やカメラだけではない強みが投資家を引き寄せている。