自分が最も大切にしたいものは何なのかを見据えていく
―― 逆にマイナス面を考えますと、お金の蓄えがそれほどない場合、病気になって仕事ができなくなるなどのリスクについては、どうお考えでしょうか?
酒井: 子供を持たずに年を取っていくと、やはりこれからは健康面や老後の生活などを自分の力でどのように乗り切るかが問題になると思います。ただ、これからはそのような人がどんどん増えるので1人で老いて1人で死んでいくことができる社会システムが構築されて行くでしょうし、それは家族がいる人にとっても悪くないことだと思うんですね。介護ですとか看取りですとか、子供がいても迷惑をかけたくないと思う人が多いわけで、そのへんの不安を取り除く材料にはなるのではないか。みんなが自分で自分の最後を決めることができるようになっていくのは、悪くないかなと思います。
―― 一方で、お金を狙われて詐欺にかかったり、地震やコロナなど予測もつかないことが起きたりする中で、お金を持っていれば安心できるのかと言えば、そうでもなかったりします。
酒井: 何歳まで生きるかがわからないのが大きな問題ですが、自分が最も大切にしたいものは何なのかを見据えて行くことで、経済的な部分での計画の建て方は人によって違ってくるのかなと思います。
―― 酒井さんご自身は、30代末からパートナーの男性がいるが、子供はおらず、ご両親やお兄さんが亡くなって、身近な家族がいなくなってしまったとご著書で書いておられました。姪っ子はいらっしゃるとのことですが、お金のことも含めた心配などをご自身で考えられることはありますか?
酒井:昔は、婚姻関係を結んでいないと入院とか手術のときとかに大変だったようですが、色々な家族の形態が出てきている今は、必ずしもそうではなくなってきています。家族の形態も、世の中の制度も激変を続けて行くでしょうから、その辺りのことは今から心配してもしょうがないのではないかな、と。これから色々と問題はあるでしょうが、その時々で対処していくことになるんだなと思いますね。
酒井順子さん プロフィール
さかい・じゅんこ
エッセイスト。1966年、東京都生まれ。高校在学中から雑誌でコラムを書き、大学卒業後、広告会社に入社。3年で退社し、以降は執筆に専念している。「負け犬の遠吠え」は、当時のベストセラーになり、婦人公論文芸賞、講談社エッセイ賞をダブル受賞。このほか、「子の無い人生」「男尊女子」など著書多数。2020年11月には、最新刊「ガラスの50代」を出した。