「負け犬」論争から17年 酒井順子さんに聞く女性たちの「あの頃」と「今」【インタビュー】

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みんな、自分をふと振り返る時間を持つ年代

―― では、「負け犬」の現在はどうなっているかについて。酒井さんが「負け犬...」と同じ講談社から11月に出された新著「ガラスの50代」では、50代独身問題についても書かれています。子供のいる「勝ち犬」でも様々な問題にぶつかっている可能性はありますが、「負け犬」は、その後20年近く経って、どんな生き方になっているのでしょうか?

酒井: 今も私は結婚はしていませんが、30代で「負け犬...」という本を書いたときと50代になってからの感覚はかなり違っているところがあります。家族を持つこと、そして1人でい続けることの意味合いは、30代ではまだわかっていませんでした。すでに子育てを終わって孫を持つ人もいる一方で、独身でいる人もいる50代ですが、子育て真っ盛りの頃とは違って、両者があゆみ寄って、また共に時間を過ごして、加齢問題やら親の悩みやらを共有するようになってきています。みんな、自分をふと振り返る時間を持つ年代だと思うんですね。そういう部分で両者の距離が近づいているところもある一方で、子供がいる・いないという違いの大きさも、実感する年代でもある。立場によってまったく違う大変なことをそれぞれ背負っているので、結婚しているかどうかで良いとか悪いとかいう問題ではないようには思いますね。

――酒井さんの「負け犬...」のご著書について、「静かな自己肯定」と評された方がおられましたが、「負け犬」であっても人間として幸せになれると、マイナスに考える必要はないのでしょうか?美を見る目を養うなど都市文化の担い手として、また、コロナ禍でも消費の主役として、社会に貢献していると考えられますか?

酒井: 当時、「負け犬の遠吠え」を書いたときは、みんなを励ますというよりは、こういう人が今世の中にいるのだということを示したいという気持ちを持っていたように思います。当時の私は、どちらかと言えば「結婚はした方がいい」という主義だったので、身近にいる独身の友人にはしきりに結婚を勧めていたものです。その時に結婚をした人もいればしない人もいて、今それぞれ幸せに生きているようです。世代的にバブルを知っていますから、消費の楽しさは昔も今も享受しているかと思いますが、「社会に貢献」というほどではないような気もします。
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