市場独占の「被害」はどこに
米下院司法委員会も2020年10月にGAFAの市場支配力に関する調査報告書をまとめ、FBが買収前のインスタグラムを「強力な脅威」と警戒していた社内メールを示したうえで、ライバル企業の買収によってSNS市場を独占したと結論づけている。
ただ、反トラスト法違反を立証するためには、市場独占に伴う「被害」を特定する必要がある。FBに対する訴えから「被害」を要約すると、(1)不当な手段でライバル企業の対抗の芽を摘み、(2)技術革新を阻害し、(3)サービスの選択肢を狭め、(4)個人情報保護の品質を低下させている――ということになるが、具体的な被害状況は説明していない。FBは基本的に消費者に無料でネットサービスを提供しており、当局側が主張するのが市場独占による価格の引き上げといった「目に見える被害」ではない点には注意が必要だ。
裁判としては、米当局がどのような証拠を示し、裁判所がどう判断するかが注目点ということになるが、SNSが現代社会を支える情報インフラになり、そこで巨額の利益を上げている以上、FBなどが運営を透明化する責任があるのは間違いない。