おいしさの裏には...「何度も何度も試飲しました」
開発にあたり「消費者に触れる部分を作りこむのに一番苦労した」と話すサブストロームさん。「消費者に触れる部分」とは先述したパッケージデザイン、そして味だ。せっかくパッケージで目を引いても、おいしくなければリピートにはつながらない。
サブストローム:初めてアルコール市場に参入するので、お酒の味をどういう風に作っていくのがいいかという知見が少ないと思います。その中で、チームで何度も何度も試飲しながら、お店で絞って飲むようなレモンサワーの味を作っていくのは、すごく難しいところでした。
――檸檬堂の「おいしさ」は、どのように引き出しているのでしょうか。
サブストローム:檸檬堂は、レモンを皮ごと含めて丸ごとすりおろす「前割りレモン製法」を使っています。レモンのおいしさは、果汁だけでなく、皮にもあります。すりおろしたものをお酒に漬け込み、レモンのおいしさを引き出してから、炭酸を加えています。
前割りレモン製法は、全国のレモンサワー専門店を巡った時に得た情報や、九州で親しまれている「前割り焼酎」という飲み方に着想を得ている。前割り焼酎とは、数日前から焼酎と水で水割りを作り、味をなじませ、お客さんをもてなすという文化だ。サブストロームさんは、この方法ともてなしの心に、檸檬堂との親和性を感じたという。
現在、檸檬堂が展開している商品は以下の5種。
「定番レモン」(アルコール分5%、レモン果汁10%)
「塩レモン」(アルコール分7%、レモン果汁7%)
「はちみつレモン」(アルコール分3%、レモン果汁7%)
「鬼レモン」(アルコール分9%、レモン果汁17%)
「カミソリレモン」(アルコール分9%、レモン果汁9%)
ここで注目したいのが、それぞれの「アルコール度数」と「果汁率」。製品によって異なるが、それらを変えることにどのような意図があるのだろうか。
サブストローム:発想のヒントは低アルコール市場全体を見た時にありました。販売されている低アルコールブランドは、だいたい1つのブランドで1つの度数です。例外もありますが、ビールは5%、低アルコール市場は3~9%で、ビール市場はどんどん右肩下がりで落ちている。逆に低アルコール市場は10年以上ずっと伸び続けています。
興味深いと思ったのは、低アルコール市場はビールに比べて幅広いアルコール度数を提供しているということ。味もいろいろあります。多様な消費者の好みに対応していることが、低アルコール市場の価値・魅力の一つだと思い、このブランドでの再現にチャレンジしました。
つまり、その日の気分やシーンに合わせて、アルコール度数や果汁率を選べるということ。12月28日には「甘くない檸檬堂が飲みたい」といった消費者の声を受け、新製品「カミソリレモン」を発売した。
最後に、檸檬堂の今後の展望を、サブストロームさんに聞いた。
サブストローム:お酒が強い弱いに関わらず、そのおいしさや楽しさを、より多くの方に知ってもらえるようにしていきたいです。また、新しいことをどんどん市場でやっていくことで、より低アルコール市場が盛り上がり、活性化していくと嬉しいです。
――新製品もどんどん出していく予定ですか。
サブストローム:考えなしに出していくつもりはないです。檸檬堂はお店なので「その時の最適なラインアップは何か」と考えながら提供していきます。おいしいお酒を造るのは簡単ではなく、納得できる味じゃなければ出しません。
カミソリレモンも、消費者の声に応えられるだけの、おいしいものができたから出せました。ドライな味にしていくと、だんだんお酒くささが悪めだちしますが、そうはならなかった。レモンの果汁感がちゃんとあって、でもキレがあるものが実現できました。