ヒットの理由は「パッケージ」にあり?
続いて、九州で販売を始めた2018年5月から、19年10月の全国展開、現在のヒットに至るまでの経緯を、サブストロームさんに振り返ってもらった。
――最初の発売地域を九州限定にしたのはなぜですか。
サブストローム:僕は九州出身ですが、九州は焼酎文化が強いです。日本酒もおいしいものがいっぱいあるし、すごくお酒の舌が肥えているエリアです。そこに一度出してみて、レモンサワーが消費者にどの程度受け入れられるのか、見てみたいと思いました。
――19年10月に全国展開したきっかけは。
サブストローム:九州の販売も好調でしたし、消費者の声が非常に良かったからです。中には、出張などで檸檬堂を買って帰ってきて「密輸」と表現する方もいました。「買ってきてと頼まれたから密輸してきた」とか。セールス動向だけじゃなく、消費者の反応もポジティブに捉えて全国拡大に至りました。
――実際に全国展開してみて、どうでしたか。
サブストローム:九州は販売エリアが限られていて、認知も低かったと思います。ただ、お酒好きの中では「九州でコカ・コーラが初めてのお酒をやっているらしい」「しかもすごくおいしいらしい」と口コミが広まっていました。その声が後押しとなって、全国では九州の時以上にたくさん売れていると感じます。
20年1月には販売が想定を上回り、コカ・コーラボトラーズジャパンが出荷を一時停止するほど売れ行きは好調。日経トレンディと日経クロストレンドが11月に発表した「2020年ヒット商品ベスト30」の第5位にも選出されている。
また、コカ・コーラボトラーズジャパンが11月に発表した20年12月期第3四半期決算の発表によれば、「定番レモン」はレモンサワー部門の金額シェア第1位を獲得(出典: Intage SRI 1-9月)。レモンサワーを代表するブランドになったといっても過言ではないだろう。
――ここまでのヒットは予想されていましたか。
サブストローム:個人的には、自分が飲みたくなるようなおいしいものを作って、世の中に出すというのが一番のゴールでした。どのくらいのセールス規模でというのは意識しないようにしていました。
――檸檬堂がここまででヒットした理由は、何だと思いますか。
サブストローム:どうですかね...。それがわかったら社長になれるかも(笑)
まず、一日の終わりのご褒美に買って飲むものとして、受け入れてもらえたと思います。檸檬堂は自分だけの大切な時間に飲むものに、おいしさだけでなく、雰囲気やちょっとしたクオリティを含めて提供することを目指して開発しました。それがうまくいったと思います。
事前に「やらない」ことをいくつか決めていたというサブストロームさん。その一つが「パッケージデザインにフルーツの写真は入れない」というものだった。多くの競合商品では、こうしたパッケージを採用しているが――。
サブストローム:缶チューハイは大体家で飲まれることが多いので、家に置いておきたいデザインにしたいというのは当初から話していました。それは、人の温もりや気配を感じるようなデザインです。
檸檬堂の開発にあたり、サブストロームさんは全国各地のレモンサワー専門店に足を運んだ。店内の雰囲気、並んでいるメニュー、スタッフの服装、来ているお客さんの傾向...店の隅々までリサーチし、そこからパッケージデザインのヒントを得た。
サブストローム:お店では、和のデザインでも古臭くないものを使っているところが多く見られ、1960年にスタートしたレモンサワーを新しい形で消費者に届けるにはいいのではないか、と考えました。上部の赤と白の結びは、前掛けをイメージしています。
インスタグラムでは檸檬堂の投稿が多く見られ、「#檸檬堂」と検索するだけでも3万5000件がヒットする。SNS映えするデザインは檸檬堂の大きな強みの一つと言える。
サブストローム:パッケージがかわいいと言ってくださる方は多いですし、リピートしてくださる方も非常に多いです。そして味もおいしいから、もう1本、2本というように買っていただいている。値段は他のものより少し高いですが、その値段に見合ったおいしさは感じていただけているようです。