ボクシングのWBO世界スーパーフライ級タイトル戦が2020年12月31日、東京・大田区総合体育館で行われ、王者・井岡一翔(31)=Ambition=が同級1位・田中恒成(25)=畑中=を8回TKOで破り王座防衛に成功した。注目の日本人対決を制した井岡は目標の王座統一へ向けて大きく前進。最高の形で2020年を締めくくった。
ビッグマッチ実現なら海外進出も
「世代交代」を掲げて4階級制覇を目指した田中を技術で封じ込めた。初回から果敢に攻め込む田中に対して井岡はガードを固めて冷静にパンチを見極めた。5回には田中のガードが下がったところに左フックを打ち込みダウンを奪い、6回にも左フックでダウンを奪った。とどめの一撃も左フック。井岡の左が田中のアゴを捕らえたところにレフリーが割って入って試合を止めた。
世界3階級制覇の無敗挑戦者を寄せ付けず王座防衛を果たした井岡が次に見据えるのが王座統一戦だ。スーパーフライ級には強豪王者が顔を揃え、統一戦となればビッグマッチとなることは必至。海外進出の可能性もあり、かねてからビッグマッチを望む井岡にとっては大きなチャンスとなる。
世界のスーパーフライ級の現状はどのようになっているのか。WBAはローマン・ゴンサレス(ニカラグア)がスーパー王者に君臨し、WBCは同級最強の呼び声高いファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)がベルトを保持。そしてIBFはジェルウィン・アンカハス(フィリピン)が長期政権を築こうとしている。
井岡の王座統一路線に修正も...
井岡が対戦を望むゴンサレスとエストラーダは、今年3月に王座統一戦が米国で予定されており、世界的な注目を集めている。2012年11月以来の再戦となり軽量級屈指のビッグマッチとなる。井岡はこの勝者と対戦したいところだが、ここに割って入ってきそうなのが、元WBC同級王者シーサケット・ソー・ルンヴィサイ(タイ)だ。
シーサケットは現在WBC同級1位にランクされており、王者への指名挑戦権を保持している。WBCは公式サイトでエストラーダVSゴンサレス戦が実現に至った経過を報告しており、それによるとシーサケットが統一戦実現のために自身の指名試合を後回しにすることを承認したという。
また、WBCは公式サイトでシーサケットの次戦についても言及している。シーサケットはエストラーダとゴンサレスの勝者と今年の8月もしくは9月までにWBC王座を争うことになるとしている。WBCの「指示」通りに事が運べば、今後の井岡の王座統一戦路線は修正を余儀なくされそうだ。
ビッグマッチは今秋以降か
一方のIBF王者アンカハスは、バンタム級転向を視野に入れており、海外の専門メディアの報道によると、陣営は転級する前にWBAレギュラー王者との対戦を希望しているようだ。今後、エストラーダやゴンサレス、シーサケットらとからんでくる可能性は低く、井岡との統一戦の可能性も低いだろう。
今回のタイトル戦で井岡の世界的評価は急上昇した。スーパーフライ級戦線の現状を踏まえると、井岡が望むビッグマッチは今秋以降に持ち越されそうな様相だが、田中戦の勝利によってチャンスは広がった。31歳のベテラン王者にとって2021年は勝負の年になりそうだ。