同人誌即売会は、日本のマンガ界に貢献、底上げしてきたことを認められつつある。しかし新型コロナウイルス感染症拡大の影響で2020年、世界最大級の同人誌即売会「コミックマーケット(以下コミケ)」含む数多くの同人誌即売会が延期や中止を余儀なくされた。
今回J-CASTニュースは、こうした窮状にいち早く目を留めてきた政治家の一人、藤末健三参院議員(無所属、自民党・国民の声会派)に、同人誌即売会に注目した背景などついて聞いた。藤末氏は通商産業省(現:経済産業省)から参院議員に転じたという経緯もあり、日本のサブカルチャー産業を育てるために同人誌即売会に関する問題にも取り組んでいる。
(聞き手・構成:J-CASTニュース編集部 瀧川響子)
同人文化があるからこそ、たくさんの漫画家が生まれてくる
同人誌即売会に関する問題について取り組む背景や動機はどのようなものだったのか。藤末氏はこう振り返る。
藤末:東京大学の准教授時代、卒業論文で漫画家のキャリア分析を行った学生がいたんですよ。今ではゲーム会社「グッドラックスリー」の社長、井上和久。漫画家の方々がどういうキャリアで売れていくかということを分析していて、そのキャリアのルーツであるコミケなど同人誌即売会も研究しました。その関係で一緒にコミケに行きました、懐かしいですね。
さらに身内がオリジナルの創作物を頒布できる同人誌即売会・コミティア(COMITIA)に出展していたことや、以前から交流のあった山田太郎参院議員(自民党)にコミケでの街頭演説に誘われたことで、関わりを強めていった。その中で、同人誌即売会が日本のサブカルチャー産業を支えるものであると実感した。
藤末:国会でも申し上げましたが、日本の強みは「同人文化」。大手出版社の方ともお話していてそう実感します。昔は有名な大先生に師事した人がヒットを飛ばしていたけれども、今は突然現れてヒット作を出す作家もいる。そういった方々は同人活動の中で絵を学んだり仲間と情報交換を行ったりしています。
同人文化があるからこそ、たくさんの漫画家が生まれてくることは出版社も理解しております。そして大事なことは、こうした(作家によって生み出される)マンガがある。マンガがアニメやゲーム、映画、グッズになる。全部繋がっているんですね。そしてそれが世界展開しています。
例えば人気マンガ「この世界の片隅に」などの作者・こうの史代さんは、上述のコミティアで育ち巣立った作家として知られている。同作は現在までに、ドラマ化やアニメ化などのメディアミックス展開もされた。このような同人誌即売会出身作家によるゲームやアニメは多数ある。
藤末:日本はキャラクターで世界展開できる国です。裾野が広いから山が高いんですよ。だから、同人誌即売会を守り、そこから生まれるマンガ、アニメ、ゲーム産業などのビジネスや産業を作っていきたい。クリエイターの方々が大事です。