谷川流さんの人気小説「涼宮ハルヒ」シリーズの最新作、『涼宮ハルヒの直観』のある箇所が、「誤植では?」とファンの間で騒ぎになっている。本来なら「もちろん」ではないかと思われる部分が、「もろちん」と表記されているのだ。
単なるミスなのか、それとも何か意味のある描写なのか――読者たちは頭を悩ませている。
笑顔で「もろちん」
『涼宮ハルヒの直観』は2020年11月25日、角川スニーカー文庫から刊行された。2003年の第1作以来、テレビ、劇場版と複数回アニメ化も重ねた「ハルヒ」シリーズの9年半ぶりの最新作とあり、各種のベストセラーランキングでも直後から首位をマークした(日販 オープンネットワークWIN、hontoなど)。
ところが、ツイッター上では発売直後から、一部の読者が、本来「もちろん」であるはずの部分が、1文字違いの「もろちん」になっているのでは?という指摘を受けていた。12月29日にはあるユーザーが該当箇所を写真付きで投稿し、これが1万件以上リツイートされるなどして、話題となった。
J-CASTニュース編集部が、Amazon Kindleストアで配信されている電子書籍版を30日、購入したところ、作中では3カ所、「もろちん」という表記が確認できた。うち2カ所は主人公である涼宮ハルヒのセリフだ。さらにそのうち1カ所は物語の後半、笑顔とともに「もろちん」と断言しているため、非常に目立つ。
読者の間には驚愕と動揺が広がった。作中ではハルヒは退屈を嫌い、しばしば暴走する「個性的」な人物として描かれていることや、謎解き的なストーリーが多い作風もあり、「ハルヒの場合もろちんも口癖の可能性がある」「ハルヒなら本当に『もろちん』が伏線になってる可能性があるもんなぁ」と推理する向きもあるなど、ファンの反応は分裂状態にある。いずれにせよ、ことさらに憤慨する読者は少数派のようだ。
別の個所ではちゃんと「もちろん」
編集部では『直観』のほかの個所も、Kindleアプリの検索機能で確認した。本来の形とみられる「もちろん」は、「もろちん」よりはるかに多く使われており、ハルヒのセリフでも「もちろん」という形で登場する。同作品では「もちろん」と「もろちん」が混在しているのだ。
さらに念のため、第1作『涼宮ハルヒの憂鬱』から前作『涼宮ハルヒの驚愕』までの過去作も確認した(いずれもKindle版)。
ハルヒは頻繁に「もちろん」という言葉を口にしており、たとえば『憂鬱』で、登場人物の朝比奈みくるにバニー服を着せようとする場面の「もちろん、みくるちゃんのぶんもあるわよ」を皮切りに、すべての巻で「もちろん」というセリフが確認できた。
しかし、編集部で確認した限りでは、「もろちん」はセリフ、地の文も含め、見つけることができなかった。
校閲側にとっては憂鬱な話題には違いないが、「もちろん」が「もろちん」になる誤植は過去にもたびたび盛り上がりを見せている。他作品の事例としては、漫画「名探偵コナン」での一コマなどが、ネット上ではしばしば拡散される。