ネットニュースとコロナ禍 J-CASTが伝えた2020年【歳末ネットメディア時評】

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   新型コロナウイルスの流行は、あらゆる環境を「ニューノーマル」に切り替えた。ネットニュースもまた、そのひとつだ。J-CASTニュース編集部は、激動の2020年をどう伝えてきたのか、そして取材体制への変化は――。

  • 情報との接し方も変わってきた
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生の声を届けた「#現場を知って」

   記事をさかのぼる限り、最初にJ-CASTニュースが報じたのは1月16日。国内初の感染者を確認したと発表された日だった。「新型肺炎患者『濃厚接触』とは? 厚労省に定義を聞くと...」と題し、厚生労働省・結核感染症課への取材を通して、「濃厚接触者」の定義を伝えている。当時はまだ「新型コロナウイルス感染症」の名前は一般化されておらず、WHOの「COVID-19」命名以前だったこともあり、記事では「新型肺炎」と表記していた。

   流行が本格化すると、ニュースもほぼコロナ一色とならざるを得なくなった。ウイルスの全貌がまったく見えない中、どう動けばいいのか。試行錯誤が続いた。

   そんな中、春から夏にかけて不定期連載した「#現場を知って」では、「現場のリアルな声」をキャッチフレーズに、レンタルビデオ店などの小売店をはじめ、性風俗産業、医療・教育関係者まで、コロナ禍でも仕事を続ける人々の「声」を紹介した。

   またYahoo!ニュースとの共同企画として掲載した「あなたのツイートが、『デマ』と断罪されたら 『情報に向き合う』ことの限界【#コロナとどう暮らす】」(8月30日掲載)では、コロナ時代のSNSとの向き合い方について、誤情報を発信してしまった当事者に焦点を当てた。

読者投稿が取材の原動力に

   この1年で、編集部の働き方も変わった。筆者は4月と5月に、「テレワークとは『戦い』である ネットニュース編集者が感じた『可能性と孤独』」「テレワーク、長期戦のために必要なのは... ネットニュース編集者が感じる『環境』の課題」と題して、在宅勤務のメリットや課題についてレポートした。

   編集部ではその後、マイクロソフトのチャットツール「Teams」を導入し、ネタ提案から送稿まで、オンライン上でやりとりするように。出社時の交通費も都度精算となり、定期券も継続購入しなくなった。Zoomでのオンライン取材も慣れてきた。一方で、現場へ出向いての取材は困難に。新たな原動力になったのは、読者からの投稿だった。

「メディアの力が無いとこのまま危険な状況が変わりません」
「店員はもう限界です。少しでも報道をして頂き会社の方針を変えてください」
「少しだけでもいいです。ぜひ、報道の力を貸してください。取り上げてください」
「感染させたくないので取材を直接してくださいとは言えないのですが、なにかしらの調査や記事での発信をしていただけないでしょうか」

   緊急事態宣言が全都道府県に拡大された4月16日以降、情報提供フォームへのメッセージが急増。発表資料では得られない「叫び」が記されていた。徐々に落ち着いてきたが、コロナ関連を問わず、いまでも日々、読者からの声が寄せられている。

どんな取材ができるんだろう

   実際に記事に寄せられた情報によって、事態が進むこともあった。たとえば、青木正典記者が担当した「令和納豆」。クラウドファンディング(CF)の返礼品として、定食の「生涯無料パスポート」が配布されたが、店舗利用時に一方的に没収されたとの口コミが拡散して、注目をあびた事案だ。初報では、口コミをもとに運営企業へ取材依頼を送ったものの、期日までに回答はなかったと伝えていた。しかしその後、パスポート元所有者からの情報提供を受け、専門家の法的見解なども交えて詳報。最終的には、元所有者に対して、支援額だった1万円全額の返金対応をとると発表された。

   地道な取材が実を結ぶケースも。「『やらせ口コミ』業者の正体 事務所にスマホ60台...1件8000円~で虚偽レビュー」では、GoogleマイビジネスやAmazon、食べログなどの口コミサイトに、虚偽レビューを書き込む「口コミ代行業者」を谷本陵記者が追った。複数関係者の証言や内部資料、公開情報に加えて、契約企業の明かす「後悔」も調査報道。「ネットの闇」の実態を伝えた。

   限られたリソースでも、できることは何だろう。ソーシャルディスタンスで感染リスクが抑えられた反面、人間関係が疎遠になることも増えた。不安な日々が続くなかで、少しでも読者に寄り添い、偉ぶらない「生の声」を届けたい。そんな一心で駆け抜けた一年だった。

(J-CASTニュース副編集長 城戸譲)

<J-CASTニュースでは、読者からの情報提供を受け付けています。https://secure.j-cast.com/form/post.htmlからご連絡ください>

【J-CASTネットメディア時評】
いまインターネットでは、なにが起きているのか。直近の出来事や、話題になった記事を、ネットメディアの「中の人」が論評します。

城戸譲 J-CASTニュース副編集長
1988年、東京生まれ。大学でジャーナリズムを学び、2013年ジェイ・キャスト新卒入社。Jタウンネット編集長などを経て、18年10月より現職。「ニュースをもっと身近に」をモットーに、政治経済からエンタメ、生活情報、炎上ネタまで、真面目とオモシロの両面で日々アンテナを張っている。ラジオとインターネットが大好き。(Twitter:@zurukid

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