「人類や文化の前進のためには、ここからひとつひとつ賢くなっていかないと」
――あっという間の1年でしたが、コロナ禍を通じて自身の音楽観に変化はありましたか。
曽我部:うーん、変化は特にないですね。音楽への捉え方もその日その日で違うので。あまり音楽を対象化して見られていないというか。とにかく今日やりたいことをやるという生き方なんで。相変わらず音楽は好きですし、自分がやる仕事だなっていうのは思っていますけど。ただ、いい歌を歌いたいなと思っているだけで。今後もそれは変わらないと思います。
――ライブエンターテイメントを核とする音楽業界、そして飲食業界はコロナ禍で最も痛手を被った業界の一つだと思います。アーティスト、飲食店オーナーの立場として、改めて「新型コロナウイルス」をどう思いますか。
曽我部:うーん...(しばらく考え込む)。確かにコロナですごく大変な状況になったけど、こうでもならないと気づかなかったり、変えようとしなかったこともいっぱいあると思うんですよね。例えば勤務形態とか、学生なら勉強の仕方とか。当たり前だと思って満員電車に乗って出社してたことが、実は理にかなっていなかったというか。今日もニュースで見たけど、大学生の勉強への理解度がリモート講義の方が高かったとか。もちろんウイルスだけを取ったら、亡くなられている方もいるし、ライブハウスや飲食も大変な状況にある。もたらした社会的なダメージはネガティブに捉えるべきかもしれない。けれど、人類や文化の前進のためには、ここからひとつひとつ賢くなっていかないとダメだなと思います。
――コロナが変革への「いいきっかけ」になる、ということですかね。
曽我部:いいきっかけ、っていうと語弊があるかもしれないけど。でもオリンピックもそうだし、働き方改革と言いながら何も変わらなかったのもそう。みんな口だけで何も変えようとしないし、気づかなかったことが、無理矢理にでも変わっていかざるを得ない状況なんだと思います。