ニコニコ動画に現存する最古の動画「新・豪血寺一族 -煩悩解放 - レッツゴー!陰陽師」(以下「レッツゴー!陰陽師」)は2020年、再び大ブームを迎えた。その背景には何があったのだろうか。
「Let's go」と言えば済む場面で...
「レッツゴー!陰陽師」は、2006年にエキサイトから発売されたPlayStation 2用ゲームソフト「新・豪血寺一族 -煩悩解放-」の特典PV(プロモーションビデオ)映像。陰陽師・矢部野彦麿と巫女・琴姫、そして仏法僧達による坊主ダンサーズらが、3Dアニメでコミカルに歌い踊る動画だ。
ニコニコ動画上には2007年、ニコニコ運営が権利者に確認したうえで投稿したものが掲載されている。曲に合わせて投稿されたコメントで画面を覆いつくされる「弾幕」などで大盛り上がりし、2020年12月現在までに再生回数は1990万回を超え、コメント数は約511万件に上っている。
投稿から10年以上たった現在、再びこの動画のブームが巻き起こった。J-CASTニュースは、検索ワードの量の増減を時系列にたどれるツール「Googleトレンド」とSNS分析ツール「ソーシャルインサイト」を用いて、このブームの背景に何があるのか調べた。
今年最初に話題となったのは2月下旬。火付け役は、女性VTuberグループ「ホロライブ」所属の宝鐘マリンさんだった。宝鐘さんはデビューした2019年から、配信中に「レッツゴー!陰陽師」を口ずさむなどかなりのファンだったようである。そして2月22日、他の配信者と共に英語縛りでゲーム配信をしていた際にも、「Let's go」の代わりに「レッツゴー!陰陽師」と口を滑らせてしまった。このことを24日、同グループの配信者・桐生ココさんの番組コーナーでネタにしたことが話題となり、ツイッター上のトレンドに「レッツゴー!陰陽師」が浮上し、ドワンゴの「ニコニコニュース」にも取り上げられた。
さらにこの熱が冷めぬ間に、3月6日の「レッツゴー!陰陽師」投稿13周年記念が訪れ、またしてもツイッターのトレンド入りを果たした。当該動画が2007年ごろのニコニコ黎明期ユーザーだけでなく、新規のユーザーの間でも改めて認知されるものとなったとみられる。
「レッツゴー!陰陽師を歌いながらリンボガチャを回しました」
そして12月上旬、年内で2度目のブームが起こった。人気スマートフォン向けアプリゲーム「Fate/Grand Order(以下FGO)」に、陰陽師のキャラクター「蘆屋道満(あしや・どうまん、リンボとも呼ばれる)」がプレイアブルキャラクターとして実装されたのである。「レッツゴー!陰陽師」の歌詞に「ドーマン!セーマン!」という掛け声もあることや、蘆屋道満の振る舞いが非常にハイテンションでコミカルなことからも、この2つを連想してしまう人は少なくないようだ。
またFGOの蘆屋道満のレアリティ(希少度)は、入手難易度が最も高い星5つ。そこで一部ユーザーの間では、このキャラを獲得するために「レッツゴー!陰陽師」を再生しながらガチャを引くという「願掛け」のような行いが流行した。
「レッツゴー!陰陽師を歌いながらリンボガチャを回しました」 「ここだけの話、レッツゴー!陰陽師を流しながらガチャったら蘆屋道満来たんですよね............」
また蘆屋道満を出撃させる際に「レッツゴー!陰陽師」と呼び掛けるユーザーや、動画とキャラクターを絡めたファンアートを投稿するユーザーも現れた。ツイッター上には、「FGOでこれ初めて知ったけど中毒性高すぎる」、「レッツゴー陰陽師を流しながら道満使い続けた」といったコメントも寄せられている。
このような大きな反響を受けて、ニコニコ動画を運営するドワンゴは、J-CASTニュースの取材にこう述べる。
「ユーザーの皆様に長くお楽しみいただいていることは把握しております。 コメントも数多く投稿いただいており、皆様によって支えられている作品かと存じますので、これからも他動画作品同様、お楽しみいただければと思います」
またFGOユーザーの間では、「レッツゴー!陰陽師」再生ページの広告欄にFGOの宣伝が掲載されやすいのではないかといった声も上がった。これについてドワンゴは、広告取引の詳細は答えられないとしながらもこう述べた。
「広告の仕様としては、特定動画をセグメント指定できる広告ではございません」