緊急事態宣言中にカレー屋を開いた曽我部恵一 「お店に来て」言えず歌に託す

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「何十年も経って聴いた時にどんな感じがするのかな」

   ――大変な状況の中、5月には曽我部恵一名義で「Sometime In Tokyo City」を配信リリースされました。12月25日配信リリースの新アルバム「Loveless Love」にも収録されていますが、どこか夢の中にいるような、それでいて暖かい、安心感のある曲だと感じました。

曽我部:不思議な曲ですよね。長いこと音楽をやってて、あんな曲作ったことないし、作ろうと思って作ったわけでもない。必然的に「今出てきた音楽」という感じ。ふと作ったらあれができてたんで、それはすごくいい経験でした。(15分近い曲だが)長くしようと思っていたわけでもなく、自然と長くなった。ライブでもやるんですが、「あー長いな」とも思わないですし。

   ――曲の終盤には「下北沢へ来たなら僕らの店に来ませんか」というフレーズが出てきます。

曽我部:宣伝ですね。

   ――(笑)。やはりこのお店(カレーの店・八月)のことを歌われているのだと思いましたが、これも自然と思いついたフレーズなのでしょうか。

曽我部: そこはね、「お店に来てください」っていうのが言えないような時期だったので、歌の中で言っておこうと思ってあえて入れました。「お店始めたんで、いい店なんで来てください」って、すごく純粋な言葉じゃないですか。でもそれが言えないのは残酷っていうか。「一生懸命やるからライブ来てください」とかね。リアルでは言えないから、あえて言っておこうと思って歌詞を書きました。

   ――歌詞全体を見ると、何気ない生活のシーンが切り取られている一方で、「どうしようもない無力さ」のようなものも感じました。まさに緊急事態宣言下の日々を象徴するような曲になったのかな、という気がしています。

曽我部:何十年も経って聴いた時にどんな感じがするのかなって、楽しみですけどね。みんなが物理的にバラバラになって会えない時期で、そういうときだから、「心の中の風景」とか「心の中の繋がり」とかをみんな大事にしたと思うんですよね。暖かい、安心感って言ってくださったけど、そういうものがいつの時代でもこの曲にあるといいなと思っています。

   (後編に続く


曽我部恵一さん プロフィール
そかべ・けいいち
1971年8月26日生まれ。乙女座、AB型。香川県出身。
'90年代初頭よりサニーデイ・サービスのヴォーカリスト/ギタリストとして活動を始める。
1995年に1stアルバム『若者たち』を発表。'70年代の日本のフォーク/ロックを'90年代のスタイルで解釈・再構築したまったく新しいサウンドは、聴く者に強烈な印象をあたえた。
2001年のクリスマス、NY同時多発テロに触発され制作されたシングル「ギター」でソロデビュー。
2004年、自主レーベルROSE RECORDSを設立し、インディペンデント/DIYを基軸とした活動を開始する。
以後、サニーデイ・サービス/ソロと並行し、プロデュース・楽曲提供・映画音楽・CM音楽・執筆・俳優など、形態にとらわれない表現を続ける。 http://www.sokabekeiichi.com


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