世界各国で新型コロナウイルスのワクチン開発が進み、日本も早ければ2021年上旬に接種が始まる。
しかし、接種を希望する日本人は他国に比べて低いとのデータがある。その背景には、ワクチンの副反応に対するメディアの取り上げ方があるとの指摘も出ている。
「ワクチンへの懐疑的な感情が根強い」
米製薬大手ファイザーは20年12月18日、日本で初となる新型コロナウイルスの製造販売承認を厚労省に申請した。有効性や安全性が確認でき次第、供給される見込み。
厚生労働省の案では、21年2~3月をめどに医療従事者へ、3~4月をめどに高齢者への接種体制を確保し、その後基礎疾患のある人などに優先して接種を行う方針だ。
一方で、ワクチンへの期待感は高いとは言い難い。PRコンサルティング会社「ケクストCNC」が11月20日~12月1日にかけて英国、スウェーデン、ドイツ、フランス、米国、日本の成人各1000人を対象にした調査では、接種可能になった場合、接種を受けると答えた日本人の割合は50%と2番目に低かった。
米ブルームバーグ通信は12月23日付記事で、日本では過去の薬害や副反応に対する扇情的な報道などの影響でワクチンへの懐疑的な感情が根強いと伝えている。
例として子宮頸(けい)がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを取り上げている。「HPVワクチンではメディアが副反応を大きく取り上げた結果、最終的には政府が積極的勧奨を差し控える事態となった」とし、新型コロナワクチンの普及のためには、政府、メディアの役割が重要との専門家の談話を伝えている。
帝京大学ちば総合医療センターの医師らが16年9月に米感染症学会の学術誌「Clinical Infectious Diseases」に掲載した研究結果では、13年3月に朝日新聞が「HPVワクチン接種後に歩行や数学的計算が困難になった中学生の症例」を報じて以降、副反応などネガティブな記事が全国紙(朝日、毎日、読売、産経、日経)で増え、反対にワクチンの有効性を示すポジティブな記事は減少したという。
政府は呼応するように、13年6月から「ワクチン接種と報告された有害事象との因果関係を証明する証拠がないにもかかわらず」積極的な摂取推奨を中止した。
厚労省の見解は
東京大学大学院の鳥海不二夫准教授の12月25日付ヤフー個人記事「ツイッター上では新型コロナワクチンをどう捉えているか」では、8月以降のワクチンを含むツイートを分析している。
その結果、新型コロナワクチンの「デマや不安をあおるマスコミの記事への注意喚起」を含むツイートが広く拡散しており、鳥海氏は「ツイッター上ではワクチンに関してはポジティブな反応が多いことが分かりました。特に、ネガティブな反応への警戒ツイートが多かったことからも、新型コロナワクチンへの期待と、ワクチン接種阻害への警戒が強いことが伺えます」と見解を示している。
厚労省の25日の厚生科学審議会の部会では、副反応について「ワクチンの接種後に副反応が生じることがあり、副反応をなくすことは困難である」「比較的軽度だが頻度が高い副反応や、重篤だが極めてまれな副反応が含まれる」と説明し、ワクチン接種の有効性とリスクを比較衡量して判断する必要があるとしている。