首相主催の「桜を見る会」の前日に安倍晋三前首相(66)の後援会が「前夜祭」として開いた夕食会の費用を補填(ほてん)していた問題で、安倍氏は2020年12月25日に衆参両院の議院運営委員会に出席し、与野党議員の質疑に応じた。
安倍氏は「道義的責任を痛感している」などと陳謝する一方で、補填は自らの関知しないところで秘書が行ったとする、12月24日の記者会見と同様の説明を繰り返した。ただ、この秘書を告訴するのかという問いには「長年私に仕えてくれたのは事実」とかばったり、参加者に発行した領収書を紛失しているにもかかわらず政治資金収支報告書を正確に訂正できた理由を明確に説明できなかったりと、新たな説明のほころびも見えてきた。
「総理、総理が言うことが本当なら、大変な思いをされましたよ。なんせ...」
東京地検特捜部は12月24日、政治団体「安倍晋三後援会」代表の配川(はいかわ)博之・公設第1秘書(61)を政治資金規正法違反(不記載)の罪で東京簡裁に略式起訴した。配川氏は16~19年の4年分の後援会の収支報告書に「前夜祭」をめぐる収支を記載しなかった疑いが持たれており、記載が漏れていた分のうち、安倍氏側の補填分は約708万円に及ぶ。略式起訴を受けて開かれた記者会見で安倍氏が行った説明によると、「前夜祭」の段取りの設定、ホテルとの交渉、立て替えの支払いなどは東京事務所が行い、東京事務所の責任者の私設秘書は、安倍氏の「5000円の会費で全てまかなっていたんだね」という問いに「そうです」と、事実と異なる説明をしていた。公設第1秘書の配川氏と東京事務所責任者の私設秘書は、今回の略式起訴を受けて辞職したとしている。
安倍氏の説明が正しいとすれば、秘書は独断で補填を行っていたことになるが、安倍氏から、この点を批判する言葉は出てこない。この点に注目したのが立憲民主党の黒岩宇洋衆院議員で、
「総理(編注:以下、安倍氏を指す)、総理が言うことが本当なら、大変な思いをされましたよ。なんせ東京の秘書が、金庫に入っていた総理のお金を、勝手に、総理の意思ではなく、差額補填に使っていた。これはですね、明らかに、今まで判例を見ても、業務上横領罪が成立する可能性が極めて高い」
などと指摘。刑事告訴の可能性をただした。
「総理からすれば、『なんで自分のカネを勝手に使った。しかも差額補填をしていた。ウソをついていた』。相当憤っているでしょう。総理、この該当者を、業務上横領罪で、告訴、当然するんでしょうね?」