「バズり」に愛された人、その魔力に踊らされた人 SNS狂騒曲2020【歳末ネットメディア時評】

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   2020年の年末企画として、「歳末ネットメディア時評」と題して、インターネットで話題になった出来事を振り返ってみたい。初回のテーマは「バズり」。SNSでの拡散をあらわす「バズ」だが、ここ1年でどんなことが起きたのだろうか。

  • SNSに踊った2020年
    SNSに踊った2020年
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星野源は「バズりの申し子」

   今年を代表する「バズり」のひとつに、ミュージシャン星野源さんの「うちで踊ろう」がある。ステイホーム期間中を楽しく過ごそうとする、前向きなコンセプトに「コラボ動画」も多数投稿されたが、その背景には「恋ダンス」での教訓があった。

   2016年、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)のエンディングテーマに、星野さんの「恋」が起用された。星野さんや新垣結衣さんらによるダンスが話題となり、ウェブ上にもファンによる「踊ってみた」が多数投稿される。ただ、YouTube投稿の容認は、あくまで期間限定の対応だったため、翌年9月にはレコード会社からの非公開・削除要請が行われ、多くの投稿者がそれに従った

   「うちで踊ろう」のブームを受けて、星野さんは「星野源のオールナイトニッポン」(ニッポン放送)で、当時の対応を「その時はそうするしかなかった」と振り返った。しかし、自分の音源でダンスしてもらえるのはうれしい、との思いから、レコード会社との交渉を進め、現在は制限がなくなっていると報告している。

「ぼくの音源、好きに使えますんで。ぜひ、もちろん『恋』もそうだし、他の曲もそうだし、だからYouTubeでも、ぼくの曲をしっかりかけてくれると、ちゃんと、ぼくにお金が入るようになりました」(20年4月28日放送分より)

   こうした経緯を踏まえて、「うちで踊ろう」のムーブメントを見てみると、星野さんはバズるべくしてバズった、まさに「バズりの申し子」に思える。

「著名人」と「下克上」の魑魅魍魎

   SNSには、もともと有名だった人物が、さらに影響力を高める側面もある。「お金配りおじさん」ことZOZO創業者の前澤友作氏が、1月に2度目の「お年玉」キャンペーンを行って以降、ツイッターのトレンド欄に、同氏や人気YouTuberによる金銭プレゼント関連のハッシュタグが上がることも増えた。一方で、「なりすまし」も多数登場し、なかには公式バッジ(認証済みアカウント)を付けているものも。来年1月のツイッターポリシー改正によって、バッジ制度の運用は是正される方向だが、当面はユーザーにも、ある程度のリテラシーが欠かせないだろう。

   下克上を目指すには、目立つしかない――。そんな発想から、過激さを追求してしまう例もある。「迷惑系YouTuber」の代表例である「へずまりゅう」は、スーパー店内で購入前の魚を食べ、その動画をアップロードしたとして、7月に愛知県警に逮捕された。しかし逮捕から数日後、新型コロナウイルスの感染が確認され、症状が出ていながらの「全国行脚」に批判が集まった。12月には「へずまりゅうの弟子」を名乗る人物も、墓地で卒塔婆(そとば)などを振り回したとして、礼拝所不敬容疑で逮捕されている

「有名税」なき令和のSNS

   過激になりつつあるのは、下剋上を目指す者だけではない。一般ユーザーによる「言葉の暴力」も今年、大きな話題になった。韓国の芸能界などでは、以前から問題視されていた「指殺人」。キーボードやスマホ操作で、人を死に追い詰める行為が、日本でも表面化してきた。

   5月には恋愛リアリティー番組の出演者が急死し、背景には「アンチ」からの誹謗中傷があったのではないかと、ネットに限らず議論を呼んだ。その後も今年は、悲しい出来事が相次いだが、そのたびに有名人と一般ユーザーの「SNSの関係性」が問われている。

   かつては「有名税」なんて言葉で片付けられることも多々あったが、令和になって、ようやくその価値観が変わりつつある。誹謗中傷に立ち向かうには、関係者はもちろん、プラットフォームの手助けも急務だ。孤独に戦う時代は、もう終わりに近づいている......と思いたい。

(J-CASTニュース副編集長 城戸譲)

【J-CASTネットメディア時評】
いまインターネットでは、なにが起きているのか。直近の出来事や、話題になった記事を、ネットメディアの「中の人」が論評します。

城戸譲 J-CASTニュース副編集長
1988年、東京生まれ。大学でジャーナリズムを学び、2013年ジェイ・キャスト新卒入社。Jタウンネット編集長などを経て、18年10月より現職。「ニュースをもっと身近に」をモットーに、政治経済からエンタメ、生活情報、炎上ネタまで、真面目とオモシロの両面で日々アンテナを張っている。ラジオとインターネットが大好き。(Twitter:@zurukid

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