ジャニーズ「トンチキソング」とは何なのか?一度ハマったら離れられない「惹かれる理由」

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   ジャニーズに不可欠で愛される「トンチキ」とは何なのか――。

   2020年12月25日放送予定の「ミュージックステーション ウルトラSUPER LIVE 2020」(テレビ朝日系)では、特別企画として「ジャニーズトンチキソングメドレー」が流れる。同局の「関ジャム 完全燃SHOW」で人気の企画「ジャニーズ伝統トンチキ名曲」がMステに進出した企画で、視聴者からの投票を参考に選ばれた「チュムチュム」(NEWS)、「バィバィDuバィ~See you again~」(Sexy Zone)、「∞SAKAおばちゃんROCK」(関ジャニ∞)、「デカメロン伝説」(少年隊)がメドレーで披露される。

   「トンチキ」は以前からジャニーズファンの間で用いられていたワードだ。何となく「ダサい」というようなニュアンスはわかるが、具体的はどんな要素を指すのか。J-CASTニュースは、なぜジャニーズファンが惹かれるのか、を調べてみた。

  • 「トンチキ」とは何なのか、なぜファンはハマるのか?
    「トンチキ」とは何なのか、なぜファンはハマるのか?
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謎の歌詞とジャンルがミックスしたサウンド

   以前から、トンチキソングと思う曲をブログやSNSで挙げるファンはいた。「ホルモン~関西に伝わりしダイアモンド~」(ジャニーズWEST)「ウタウタウ」(Hey! Say! 7)「MAHARAJA」(Kis-My-Ft2)「君の彼氏になりたい。」(Snow Man)などがある。グループ単位ではNEWS・Sexy Zone・ジャニーズWESTの曲が多いようだ。「デカメロン伝説」もイントロの「ワカチコ!」がしばしばトンチキと指摘される所以になっている。

   「ダサい」「奇抜」ともちょっと違う「トンチキ」楽曲の特徴とは何か。まずジャニーズに詳しいライターの高橋梓さんに聞いてみると、

「トンチキソングとは『意味がわからない歌詞×摩擦係数の大きいメロディ』が揃っているものだと考えます。例えばSexy Zoneの『Sexy Zone』で『Mildも地球の裏側じゃ Wildになるよ 時代を創ろう Sexy Zone』とありますが、意味が分かりそうで分かりません。

摩擦係数の大きいメロディとは、『一聴して"ん?"と感じ、聞けば聞くほど癖になる』というイメージです。例えばNEWSの『チュムチュム』は出だしが完全にインド音楽でなんとも言えない気持ちになりますが、BメロからJ-POP要素が加わり、サビでいつの間にかEDMっぽい雰囲気も混ざる...と、不思議な構成が癖になります」

と高橋さんは分析した。具体例としてはNEWSなら「チュムチュム」のほかに「サヤエンドウ」「ポコポンペコーリャ」「チャンカパーナ」、Sexy Zoneの「Sexy Zone」「Sexy Summerに雪が降る」「バィバィDuバィ~See you again~」「プンププンプン」などが該当するそうだ。タイトルだけを見ても一見意味がわからないワードが並ぶし、アイドルソングで「サヤエンドウ」とは? と首をかしげたくなる。作詞家でいうと、主に三浦徳子さんの提供曲にトンチキが多い傾向だ。

源流は80年代?

   このような「トンチキソング」の源流はいつ頃からか。著書「ジャニーズと日本」(講談社現代新書)でジャニーズの音楽史を分析したライター・矢野利裕さんによれば「『シブがき隊』や『忍者』の頃の、『他者の眼から見た日本』を描いた曲までさかのぼると思います」とのことだ。シブがき隊なら「サムライ・ニッポン」「スシ食いねェ!」、忍者なら「日本ブギ」などだろうか。これらについて矢野さんは、

「ジャニー喜多川さんがアメリカのショービジネスを日本でも作りたい、という動機で成長させてきたのがジャニーズで、ジャニーズのショーが重視するのは『非日常の魅力』です。『日本ブギ』など、カメラをさげて眼鏡をかけた当時の典型的な日本人観光客像が描かれています。外国人からみた『イメージの日本』を曲にして昇華すると、現実の日本の日常からは奇異に見え、面白く感じるのです」

と解説した。また、一見意味がわからないタイトルや歌詞には、言葉遊びを楽しむナンセンス文学的な要素があるという。

「例えば『Sexy Summerに雪が降る』は、夏に雪という組み合わせになんだろう?と思いますが、それらの意味を真面目に考え始めるともう気づいたらハマっている状態です。日本語として意味がわからない、ナンセンスなものを愛でる感覚もトンチキの要素といえます」

   「ワカチコ!」が印象的な「デカメロン伝説」も、

「少年隊は歌・ダンス共に卓越してショー・パフォーマンスを追求していましたが、ショーの世界もまた非日常が魅力です。「ワカチコ!」もイントロから『何これ?』と思わせて、いかに人の注意を惹くか、を狙ったと思います。どんな方向性でも日常との違和感を持たせることに意味があるのです」

と語った。トンチキはコミカルと違い、ウケ狙いではなく本気で聴衆を楽しませるエンタメを目指していることも見過ごせない要素だそうだ。「正統派の華やかで格好いい楽曲も、トンチキも非日常という点は共通しています。日常と違うこと自体がジャニーズも含めたエンタメの魅力です」(矢野さん)。

   トンチキの系譜はSMAPなどが台頭する90年代には一旦衰退する。「SMAPの曲だと、関西人でもないのに歌詞のほとんどが関西弁な『HEY HEYおおきに毎度あり』がかろうじて該当するかどうか、でしょうか」(矢野さん)とのことだが、00年代後半頃から楽曲が増えてくる。グループカラーによってよくトンチキ曲を歌うグループとそうでないグループに分かれ、NEWS・Sexy Zone・ジャニーズWEST・関ジャニ∞に多い傾向がある。これには「自担にはトンチキばかりでかわいそう、もっと正統派な曲がほしいというファンの声もあります」(矢野さん)というように、不満もなくはないようだ。

   ジャニーズのトンチキセンスを見られるのは楽曲だけでなく、ステージそのものにも垣間見える。「ジャニーズは舞台も『トンチキワールド』という独自の世界観が繰り広げられています。衣装も「え、何その衣装!?」と言いたくなるものも少なくないため、トンチキはジャニーズの十八番芸なのかもしれません」(高橋さん)

   一度魅せられるとどうも気になってしまうトンチキ、こんな様々な仕掛けがあったようだ。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)

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