ジャニーズ「トンチキソング」とは何なのか?一度ハマったら離れられない「惹かれる理由」

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源流は80年代?

   このような「トンチキソング」の源流はいつ頃からか。著書「ジャニーズと日本」(講談社現代新書)でジャニーズの音楽史を分析したライター・矢野利裕さんによれば「『シブがき隊』や『忍者』の頃の、『他者の眼から見た日本』を描いた曲までさかのぼると思います」とのことだ。シブがき隊なら「サムライ・ニッポン」「スシ食いねェ!」、忍者なら「日本ブギ」などだろうか。これらについて矢野さんは、

「ジャニー喜多川さんがアメリカのショービジネスを日本でも作りたい、という動機で成長させてきたのがジャニーズで、ジャニーズのショーが重視するのは『非日常の魅力』です。『日本ブギ』など、カメラをさげて眼鏡をかけた当時の典型的な日本人観光客像が描かれています。外国人からみた『イメージの日本』を曲にして昇華すると、現実の日本の日常からは奇異に見え、面白く感じるのです」

と解説した。また、一見意味がわからないタイトルや歌詞には、言葉遊びを楽しむナンセンス文学的な要素があるという。

「例えば『Sexy Summerに雪が降る』は、夏に雪という組み合わせになんだろう?と思いますが、それらの意味を真面目に考え始めるともう気づいたらハマっている状態です。日本語として意味がわからない、ナンセンスなものを愛でる感覚もトンチキの要素といえます」

   「ワカチコ!」が印象的な「デカメロン伝説」も、

「少年隊は歌・ダンス共に卓越してショー・パフォーマンスを追求していましたが、ショーの世界もまた非日常が魅力です。「ワカチコ!」もイントロから『何これ?』と思わせて、いかに人の注意を惹くか、を狙ったと思います。どんな方向性でも日常との違和感を持たせることに意味があるのです」

と語った。トンチキはコミカルと違い、ウケ狙いではなく本気で聴衆を楽しませるエンタメを目指していることも見過ごせない要素だそうだ。「正統派の華やかで格好いい楽曲も、トンチキも非日常という点は共通しています。日常と違うこと自体がジャニーズも含めたエンタメの魅力です」(矢野さん)。

   トンチキの系譜はSMAPなどが台頭する90年代には一旦衰退する。「SMAPの曲だと、関西人でもないのに歌詞のほとんどが関西弁な『HEY HEYおおきに毎度あり』がかろうじて該当するかどうか、でしょうか」(矢野さん)とのことだが、00年代後半頃から楽曲が増えてくる。グループカラーによってよくトンチキ曲を歌うグループとそうでないグループに分かれ、NEWS・Sexy Zone・ジャニーズWEST・関ジャニ∞に多い傾向がある。これには「自担にはトンチキばかりでかわいそう、もっと正統派な曲がほしいというファンの声もあります」(矢野さん)というように、不満もなくはないようだ。

   ジャニーズのトンチキセンスを見られるのは楽曲だけでなく、ステージそのものにも垣間見える。「ジャニーズは舞台も『トンチキワールド』という独自の世界観が繰り広げられています。衣装も「え、何その衣装!?」と言いたくなるものも少なくないため、トンチキはジャニーズの十八番芸なのかもしれません」(高橋さん)

   一度魅せられるとどうも気になってしまうトンチキ、こんな様々な仕掛けがあったようだ。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)

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