印刷大手、大日本印刷の株価がジリジリと下げ基調で、2020年12月11日には14年5月以来、約6年半ぶりの安値をつけた。その後も大きく反転できずにいる。新型コロナの影響による印刷需要の減少が業績にダメージを与えているところへ政府が来秋、デジタル庁を設置するといったペーパーレス化の波が避けがたいものとなっていることも影響している。タブレット端末の画面などに使われる光学フィルム事業といった堅調な事業はあるものの、本業をどう立て直すかが問われている。
大日本印刷が11月10日に発表した20年9月中間連結決算の内容は、売上高は前年同期比7.1%減の6446億円、営業利益は31.6%減の175億円、純利益は84.9%減の114億円と減収減益だった。ただ、純利益の減り幅が大きいのは前年同期に有価証券売却益などの特別利益を計上した反動であるし、軒並み赤字という業種に比べれば健闘していると言えなくもない。
「イメージング事業の回復のタイミングが焦点」
事業別の内容を見ると、売上高の5割強を占める本業の情報コミュニケーション部門が停滞している。20年9月中間期は売上高が前年同期から8.6%減り、営業利益は49.9%減となった。コロナの影響で東京五輪を筆頭に大型イベントの延期や中止が相次いだことに伴って広告需要が縮小し、パンフレットやカタログなどの紙媒体が落ち込んだほか、書籍・雑誌の印刷受注の減少も続いた。また、外出自粛の影響で観光地やイベント会場での写真撮影やプリントの機会が減り、関連する製品やサービスの販売(イメージング事業)も減収となった。SMBC日興証券は決算発表後、「情報コミュニケーション部門、特に短期業績の苦戦の主因と考えられるイメージング事業の回復のタイミングが焦点」とコメントした。
一方、タブレット端末やテレビ向けのディスプレイ関連製品などを扱うエレクトロニクス部門は踏ん張った。こちらはテレワークや巣ごもり需要拡大の恩恵を受けたようだ。売上高は前年同期比2.1%増で、営業利益は1.0%減にとどまった。この結果、全体の営業利益に占める割合は前年の半分から6割強まで高まった。もともとすでに稼ぎ頭であったものがその比重をさらに高めた格好だ。
画面に触れずに操作できるディスプレイの提供を開始
ちなみに売上高が全体の4%程度の飲料部門もある。これは53%出資する北海道コカ・コーラボトリングが手がける事業を指す。国内のコカ・コーラグループは最近、「檸檬堂」ブランドの缶入りレモンサワーが好調で大日本印刷もその恩恵も受けているのだが、観光や外食での飲料需要の減少の影響が大きく、20年9月中間期は1億円の営業損失となった(前年同期は6億円の営業利益)。他に営業利益の1割強を稼ぐ生活用と産業用の包装材部門がある。
大日本印刷は12月16日、画面に触れずに操作できるディスプレイの提供を始めた、と発表した。かざした手の動きを画面下部のセンサーがとらえることで可能になったもので、非接触が求められる自動販売機などでの利用を見込むという。