企業がテレワークを推進する中で、社内のコミュニケーションに欠かせないビジネスチャット。「Slack(スラック)」「Chatwork(チャットワーク)」「Teams(チームズ)」といったツールが導入されている。
チャットは、メールに比べ迅速な対応が可能。1対1のやり取りだけでなく、グループを作ることで大人数での会話にも便利だ。
「ニュアンスとかレベル感がうまく伝えられない」
しかし社内チャットならではの悩みもあるのも事実。ツイッター上では、
「退勤してるのに会社携帯にも私用携帯にも仕事のチャットが飛んでくるんだけど......自由はないのか......」
「この会社に派遣されて1年と半年ほど経つっていうのに、私は今日社員の皆さんがチャットのメンションの末尾に『さん』を付けてることに気がついた......。付けるんだ...」
「上下関係の厳しい会社だと上司からのチャットにいいねで会話終わらせるのはやはり失礼にあたるのだろうか」
「うちの会社チャットで会話すること多いんだけど、最近ニュアンスとかレベル感が文面で上手く伝えられない 日本語むずかしいよ~」
といった声があがっている。
ツールによっては「グッドマーク」や「ハートマーク」といったリアクション(絵文字リアクション)が返せるようになっており、文言を打たずともそれだけで意思表示できる。メンションは「@(ユーザー名)」の形式を記載することで相手に気づいてもらいやすくする方法だ。
他にも「即レス(すぐに返信)しないといけないのか」「大事な内容はメールで送った方がいいのか」など、数々の疑問があるだろう。J-CASTニュースは2020年12月10日、日本接客リーダー育成協会所属のビジネスマナー講師・加藤優子さんに、それらの疑問をぶつけてみた。
「ハート」で返信は失礼?
まず、メッセージへのレスポンスに関して加藤さんに聞いた。
――社内チャットのメッセージには即レスすべきでしょうか
加藤:回答としては「イエス」です。ビジネスチャットの返信は1日以内が望ましいです。リアルタイムの会話なので、すぐに答えられる内容や状況であれば早いに越したことはないと思います。
――すぐに返信できない場合は
加藤:ビジネスチャットではリアクションが重要になってきますから、返信が遅いこと自体が相手に失礼に当たる場合もあると思います。回答に時間がかかりそう、環境的に返信できない状況である場合は、返信が遅れる旨を一報するだけでも印象が変わってくるでしょう。
基本的にはなるべくすぐに、できない場合は「できない状況にあり、いつ返信できるのか」一言送るといいと思います。
――その際、「グッド」や「ハート」のみでリアクションするのは失礼に当たらないでしょうか
加藤:基本的には社内やグループの雰囲気が大きく左右すると思います。カジュアルな社風なら、内容が簡単なことであって、話がテンポよく進むようであれば問題ないと思います。
ただ、基本的に「ビジネス」と考えた場合、しない方がいいと考えます。部下から上司の場合は一言「承知いたしました」と添えた方が、間違いないと思います。
――上司からのメッセージに「グッド」「ハート」のみで反応するのは、失礼にあたるということでしょうか
加藤:グループの雰囲気もありますが、最後は部下のメッセージで終了するように言葉を添えた方がいいと思います。
――リアクションとは別に「スタンプ」は送ってもいいのかという声もありました
加藤:表情が見えないと、文章が冷たい印象になる、ニュアンスが伝わりにくいという時があると思います。例えば、上司から部下への「がんばったね」「大丈夫?」といった激励・労わりの声かけは、文章だけだと伝わりにくいですよね。本当にありがとうとか、頑張ってねと思っているのに、文章にしてみると伝わりづらい。スタンプは「気持ちをもっと伝えたい」という時に、効果的に使うという意味では良いと思います。
――気持ちの表現方法として、効果的に使うということですね。逆に、部下から上司にスタンプを送るのも良いと考えていいでしょうか
加藤:部下から上司の場合も、上司からスタンプや絵文字が来た場合は送っていいのではないかと思います。ただ、双方とも送る相手を間違えさえしなければというところですね。「この方に、このニュアンスで送っても大丈夫かな」というのは大体わかると思いますが、そこまで察知できない関係性であれば、使わない方がいいのではないでしょうか。
休日のメッセージは控えるべき?
続いては、文章を送る際の疑問だ。
――チャットで長文は避けた方が良いでしょうか
加藤:ビジネスチャットはスピーディーさがメリットなので、できるだけ簡潔でわかりやすい文章がいいですよね。どうしても長くなる場合があると思いますが、その場合は最初に「長文にて失礼します」と一報してから送ります。
――長くなってしまった場合、気を付ける点は
加藤:一文がすごく長くなる場合は、区切って分割して送る。あとはポイントを箇条書きにして「伝えたいのはこういうことです」というのを、先に送ります。
また番号をつけて、「1、2は先にお願いします」と、優先順位をつけるのもいいのかと思います。
――見やすくするということですね
加藤:そうです。特にグループだと人によって意味の取違いが起きることもあります。文章は人によって書き方が違うので、そういう工夫をするといいと思います。
――メッセージを送る時間帯に制限はありますか。また相手が休日の場合、遠慮した方が良いのでしょうか
加藤:基本的には勤務時間内、お休みがわかっている場合は避けた方がいいと思います。どうしてもという時は、「お休みのところ失礼します」と一文添えるといいでしょう。
――退勤しているかどうか分からない場合は
加藤:その場合も、線引きとして何時までというのはないと思います。「遅い時間に申し訳ございません」というような一言入れといいのではないでしょうか。
――では、受け取る側としては、退勤後・休日はメッセージを無視しても良いということでしょうか
加藤:社内のグループで時間に関するルールを作っておくといいと思います。緊急時を除いてメッセージの送信は何時から何時まで、休みの日や時間外の返信はなくていい、という風に。
相手が休日とわかっていても「忘れないうちに言っておこう」というのはあると思います。そんな時のために、あらかじめルールを決めておくと、「とりあえず送るけど、その人は見ない」という風に気持ちよく使えると思います。
大切なのは「ビジネスにふさわしい振る舞いや言葉遣い」
――メンションを付けるとき、 例えばTeamsで入力する時は「@ユーザー名」(@は表示されない)となっています。こちらに「さん」付けは必要でしょうか
加藤:付ける、付けないは人によりますね。そもそもグループチャットだといらないと考える人も多いと思いので、決まりはないと思います。
ただ、不安であれば付けておいた方がいいのではないでしょうか。マナー的に考えると、感じがいいと思います。特に上司に対してだと、なんとなく呼び捨て感がでますよね。
――急な欠勤や、大事な内容のときなどはメール連絡の方がふさわしいでしょうか
加藤:欠勤や重要な内容だからといって、急にメールにする必要はないです。そもそも、そういう内容は電話をすべきだと思います。どうしても電話ができない時は、まずはチャットで欠勤の一方を入れる。そして、改めて後ほどお電話しますという意向を伝える。
いきなり電話をすることが失礼に当たる、すぐ電話に出られる人でない場合は、まずチャットで「○○の件でお話ししたいことがあるのですが、今よろしいですか」と一報入れます。
最後に、社内チャットをする上で大切なことを加藤さんに聞いた。
加藤:共通するのは「ビジネスにふさわしい振る舞いや言葉遣い」をすることだと思っています。つまり、(1)迅速な返信、(2)伝わりやすい内容、プラスαで一言添える気遣いです。顔が見えないので、相手への配慮を忘れないということが重要になってくると考えます。
せっかく便利なツールを使っていても、トラブルやストレスを抱えるのはもったいないですよね。それを避けるためにも、「こんな時どうしたらいいの」ということを、あらかじめ社内やグループチャットで上げておいて、共通するルールを作っておく。そうすると、仕事もスムーズに進むのではないかと思います。
つまり加藤さんによれば、社内チャットで大事なのは、
(1)迅速な返信
(2)伝わりやすい文章
の2点。さらに状況によっては「後で返信します」「これから電話してもいいですか」といった一言を添える。至ってシンプルなことだ。